Netflixドラマ『トキシック・タウン』は、スコットランドのコービーで起きた環境汚染により、障がいのある子どもを出産した母親たちの闘いをパワフルに描く、実話を基にしたドラマシリーズ。本作で何が起こるのか、ネタバレあり・なしでダイブイン(考察)していきます!
『トキシック・タウン』の概要
『トキシック・タウン』のあらすじ
舞台は1995年、スコットランドの鉄鋼の町コービー。かつて鉄鋼業で栄えたが今は錆びれたこの町で、自治区議会は建設業・運搬業のローズ&ミラーの土地を買収して土地開発の計画を進めていた。
自治区議会で土壌調査・水準測量・汚染を分析するエンジニアとして勤務するエド・ジェンキンスは、ローズ&ミラーの土地を調査するが、ヒ素やクロム、カドミウムなどによる有害物質の汚染が検出された。この地域は、70年間にわたるコービー製鉄所の廃棄物処理による汚染にさらされていたのだ。エドは同社と自治区議会に結果を報告し、警鐘を鳴らす。
そんななか、コービーに暮らすスーザン・マッキンタイアとトレイシー・テイラーが同じ日に同じ病院で赤ちゃんを出産。しかし、スーザンの息子は四肢相違で、トレイシーの娘は耳の変形と内臓に数々の問題があり、娘は間もなく死亡する。その後、同じ時期にコービーで四肢相違の子どもが生まれていることが発覚し、スーザンたちは弁護士を雇い、真相究明に奔走する──。
『トキシック・タウン』海外の評価&筆者の感想(ネタバレなし)
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『トキシック・タウン』は実話が基になっているため、四肢相違の子どもを出産した母親たちの苦悩と正義を求める闘志がリアリズムをもって描かれ、心にズシンと訴えかけてくるシリーズでした。
母親たちの13年間にわたる闘いが全4話に凝縮され、1話ごとに3~7年のタイムジャンプがあり、コンパクトに分かりやすくまとまっていたので視聴しやすかったです。
また、姉御肌でサバサバした性格の主人公スーザンが、重くなりがちなストーリー展開にユーモアと爽快感を加えたことで、「環境汚染による健康被害」という重大な問題が、さらに浮彫りになったと思います。
日本でも汚染による健康被害は、水俣病やイタイイタイ病、四日市ぜんそくなどがよく知られていますが、利益を追及して汚染から目を背ける企業には心から憤りを感じます。こうした企業の倫理観の欠如や環境問題について、改めて考えさせられるシリーズでした。
『トキシック・タウン』のキャスト
コービー自治会の議員。テッドの密告で、汚染調査の結果改ざんについて知る。
『トキシック・タウン』の全あらすじ(ネタバレあり)

出展元:https://www.netflix.com
第1話
舞台は1995年、スコットランドの鉄鋼の町コービー。かつて鉄鋼業で栄えたが、今は錆びれたこの町で、自治区議会は建設業・運搬業のローズ&ミラーの土地を買収し、土地開発を進める計画を進めていた。
自治区議会で、土壌調査・水準測量・汚染を分析するエンジニアとして勤務するエド・ジェンキンスは、ローズ&ミラーの土地を調査するが、土壌はヒ素やクロム、カドミウムなどの有害物質で汚染されていた。この地域は、70年間にわたるコービー製鉄所の廃棄物処理による汚染にさらされていたのだ。
その後、エドは自分が提出した分析報告が、「有害物質の検出なし」と改ざんされていることを発見。自治区議会のロイ・トーマス副議長に報告して警鐘を鳴らすが、取り合ってもらえずに追い払われてしまう。
1996年11月、スーザンは息子を出産するが、右手の指がない四肢相違だった。病院でスーザンと相室になったトレイシーは娘を出産するが、娘は耳が変形していて内臓に異常があり、間もなく死亡する。スーザンの夫ピーターは、息子の障がいを受け入れられずに家を出ていく。
汚染の隠蔽について正しいことをしようと決めたテッドは、自治区議会のメンバーがロイの誕生パーティーで集合している隙を見て、議員のオフィスに忍び込み、問題の書類を全てコピーする。そこへ議員のサム・ヘイガンが現れるが、残業をしている振りをして何とか切り抜ける。
しかし、ある夜テッドが寝ていると、外で何者かが彼の車に悪さをしていて車が炎上。「黙っていろ」という、ロイからのメッセージであることは明らかだった。
スーザンは買い物中に友人とバッタリ出会い、彼女の息子も手に四肢相違があることを知って驚く。
第2話
時は1999年。ある日、スーザンは記者から電話を受け、コービーで先天性欠陥症の集団発生が疑われていると伝えられる。記者にスーザンの電話番号を教えたのは、同じく四肢相違の息子を持つママ友だった。スーザンは、同じ時期に生まれた四肢相違の子どもが何人かいると聞かされ、息子コナーの障がいの原因は、環境汚染かもしれないと疑いを持ち始める。
テッドは、議会で一番良心があるサムの家へ行き、問題の書類のコピーを投函する。その内容を見て驚愕したサムはロイのオフィスへ押しかけ、結果の改ざんは違法行為だと訴え、二人は口論になってしまう。
テッドは、再びサムの家に書類を投函しに行った時に見つかり、サムに書類を警察に届けてほしいと伝える。しかし、サムは自分にそれほど影響力はないと言い訳して断る。
その頃、トレイシーは双子を妊娠。スーザンは、息子の手の手術で病院にいる時に、検診に来たトレイシーと3年ぶりに再会する。スーザンは、トレイシーの娘が障がいのために亡くなったことを知り、自分の息子に四肢相違があることを伝え、記者に連絡を取ってみようと話合う。
スーザンたちの話を基に、先天性欠陥症の集団発生に関する記事が掲載された。四肢相違の息子を持つマギーがスーザン宅を訪れて感謝を伝え、彼女も活動に参加することになる。スーザンは、健康な双子を出産したトレイシーに相談し、コービーで育ったデス・コリンズという弁護士を雇い、初めての集会では同じ問題を抱える母親たちが大勢集まる。
テッドは些細なことを理由に自治区議会を解雇され、ついにサムは問題の書類のコピーを警察に届け出る。その後、改ざん書類が入った箱が置かれた倉庫で火災が起こり、書類が全焼する。
第3話
時は2002年。サムは自治区議会の会議でロイに、「警察の捜査が火災により中断してる間は、ローズ&ミラー社との契約は一時的に保留にしたい」と訴えるが取り合えってもらえず、再び口論に。その後、ロイに呼び出されたサムは、次の議員選挙では候補者を若者に入れ替えると伝えられ、引退を促される。憤ったサムは、ロイたちに無所属で立候補すると啖呵を切る。
デスが立証に向けて証拠集めに奔走するなか、保険局と自治区議会の調査により、84年から98年までの先天性欠損症の集団発生について、汚染と欠損症を結ぶ証拠はないとの結果が発表される。しかも水道会社から、埋め立て期間中に水道水から異物は検出されていないとの返答を受けたうえ、デスが議会に提出を求めた書類は火災で全て燃えたと言われてしまう。
八方塞がりのような状況で、保険局の調査に誤りがあったことが判明し、コービーの先天性欠陥症の集団発生が証明されたとのニュースが届く。
スーザンたちの告発が全国的に注目されるようになり、ロンドンのニュース番組からインタビューの依頼を受けたスーザンは、マギーと一緒に出演。それを見ていたスーザンの元夫ピーターが突然現れ、これまでのことを謝る。最初、スーザンはピーターを撥ねつけていたが次第に子守を頼むようになり、ピーターが家にいることが多くなる。
デスは専門家と話をし、裁判で勝つには、四肢相違の子どものケースに絞るべきだとアドバイスされる。それは、耳と内臓のみに異常があったトレイシーの娘は含まれないことになる。デスは、最初からスーザンと二人三脚で尽力してきたトレイシーを排除することを心苦しく思い、その件はしばらく伏せておくことに決める。
デスが重い気持ちを抱えながらオフィスへ戻ると、サムが書類を抱えて待っていた。無所属で立候補した選挙で落選したサムは、自治区議会を告発する決意を固めていた。その資料により、自治区議会による「認識ある過失」の証明が可能になったが、いまだにデスは、有害物資が妊婦の体に入り込んだ経路が分からないでいた。
そんななか、トレイシーの何気ない発言で、デスは工場が噴出していた凄まじい量の粉塵が原因だと悟り、専門家に分析を依頼。その結果、95%の確率で胎児の成長に影響を与えるカドミウムが粉塵に含まれていたことが判明。全て証拠を揃えたデスは、訴訟を自治区議会との和解へ持ち込むことに決める。
第4話
時は2009年。デスは、自治区議会のメンバーとロイを相手に、先天性欠損症の集団発生の原因が、議会の「認識ある過失」にあるとの証拠を突き付ける。ところが、ロイは自治議会側も反論の証拠があると主張し、裁判で決着を着けることになってしまう。
裁判になれば、四肢相違の子どものケースでしか立件できないため、トレイシーは原告に含まれないことになる。デスは、その事実を苦渋の想いでトレイシーに伝え、彼女は大きく動揺する。
裁判の初日、デスはスーザンを動揺させたくないため、トレイシーが原告から外されたことは伏せておいた。しかし、初日の公判後にそのことを知られたスーザンは憤る。トレイシーはスーザンからの電話にも出ず、みんなを避けていた。しかし、粉塵の件でトレイシーの証言が必要になり、スーザンに説得されたトレイシーは裁判で証言する。
そんななかコナーは、最近家にいることが多くなった父親が、裁判で勝ち取れる可能性がある賠償金の話ばかりしていると、母親に警告。その話を聞いたスーザンは、ピーターを家から叩き出す。
デスは必要な証拠を揃えてはいたが、自治区議会の弁護士も手強く、サムはテッドを訪れて裁判で証言してほしいと頼む。最初、テッドは出廷を拒んでいたが、最終的に証言台に立ち、自治区議会が有害物資について隠蔽したことを全て暴露。テッドの証言が決定打となり、2010年4月にスーザンたちは、ついに勝利を勝ち取った。
自治区議会が負担した額は1460万ポンドに上り、大気中の有害物質と胎児への悪影響の関連を立証した、世界初の事例となった。
『トキシック・タウン』の見どころ・考察(ネタバレあり)
どこまで実話に忠実なのか
『トキシック・タウン』は、英ノーサンプトンシャー州コービーという町で実際に起こった出来事に基づいていて、この事件はコービー有毒廃棄物事件と呼ばれています。
The Wrapによると、2005年11月、30人の母親が、コービー製鉄所の廃棄物処理による環境汚染が原因で、子どもが先天性の障がいを持って生まれたと訴え、その証拠をロンドン高等法院に提出。その結果、2009年7月29日に勝訴しました。
最終話のラストにテロップで説明があったように、架空の人物が数人登場したものの、『トキシック・タウン』はかなり実話に忠実に描かれたようです。
母は強し
先天性の障がいを持つ子どもを抱え、「もしかしたら、自分のせいではないか」と自分を責めていた母親たちが、やがて真実を知り、責任を追及していく姿に胸が締めつけられました。また、どんな困難の中でも子どもを守ろうとする、母親たちの愛の強さには深い感動を覚えずにはいられません。
やはり、この世界で母親の愛に勝るものなど存在しないのかもしれませんね。圧倒的に不利な立場から声を上げ、法廷で勝利をつかみ取る彼女たちの姿は、多くの視聴者に勇気を与えるのではないでしょうか。
集団訴訟の勝利を描いた作品としては、映画『エリン・ブロコビッチ』などがありますが、長年にわたって闘ってきた人たちが最後に正義を勝ち取るラストは、やはりすがすがしい想いになりました。
影のヒーローはデス

出展元:https://www.hollywoodreporter.com
『トキシック・タウン』の影のヒーローは、なんといってもデスでしょう。スーザンとの初対面で、「訴訟で絶対に勝てます!」なんて営業トークで釣ろうともせず、真摯に裁判で勝つために必要な「4本の柱」について丁寧に説明し、物腰柔らかで優しそう~な性格が滲み出た表情とか、もう好感度100%でした。
普通、こういう注目の集団訴訟を担当したがる弁護士って、「勝利して法曹界でトップに君臨したい!」というギラギラした野心の香りをプンプン漂わせている人が多いですが、デスは正反対のタイプ。立証が壁にブチ当たった時、スーザンに「男が見限る時は分かる」なんて言われてしまうぐらい、おっとりと物事に対処しつつも、しっかりと進めるべきことを進めるやり手。スーザンの人選が間違いなかったことが証明されました。
デス役を演じたロリー・キニアは地味な存在感(←失礼!)ながらも、ダニエル・クレイグ版『007』シリーズ4作でタナー役を演じ、Neflixの人気政治サスペンスドラマ『ザ・ディプロマット』にも2シーズンにわたって出演していて、名バイプレイヤーとして活躍中です。
『トキシック・タウン』のまとめ
ちなみに、有毒廃棄物事件後のコービーは、ロンドン以外で最も急成長している自治区に選ばれるほど大きな発展を遂げているそう。雇用率は全国平均を上回る75%とのことで、最後にスーザンたちの勝利とともに、地域の再生に触れても良かったのでは?と思いました。
『トキシック・タウン』は、全4話で恐ろしい汚染で起こった悲劇と、母親の大きな愛がしっかりと描かれた見応えあるシリーズ。ぜひ、Netflixでチェックしてみてください!

