Netflixドラマ『特別捜査部Q』は、エディンバラを舞台に、未解決事件を担当する特別捜査部Qを率いることになったカール・マーク刑事が、4年前に起きた検察官失踪事件の真相に迫る展開に。謎が謎を呼ぶ本シリーズで何が起きるのか、キャスト紹介やあらすじを交えながらネタバレあり・なしで考察していきます!
【本記事の注目点】
・ネタバレを踏みたくない方へ
前半ではネタバレなしのあらすじ&海外評価・筆者の感想を紹介しますので、安心して作品を視聴すべきかどうか判断してみてください。
・ネタバレありで深掘りしたい方へ
後半ではネタバレありの全あらすじ&見どころ・考察で掘り下げ、作品の魅力を余すことなくお届け! すでに視聴済みの方も、おさらいとしてお楽しみください♪
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『特別捜査部Q』の概要
『特別捜査部Q』のあらすじ(ネタバレなし)
『特別捜査部Q』は、デンマークの人気作家ユッシ・エーズラ・オールスンのミステリー小説「特捜部Q」シリーズを、Netflixが英語でドラマ化した作品。
任務中に、相棒ハーディと共に被弾したカール・マーク刑事は4ヶ月後に仕事に復帰するが、上司のモイラ・ジェイコブソンに、未解決事件を捜査する新部署「特別捜査部Q」の主任刑事になるよう命じられる。彼は、シリアの政府難民で謎めいたアクラム・サリムと、PTSDなど数多くの症状を抱えているローズ、下半身がマヒ状態のハーディをチームに加え、4年前に失踪した検事補メリット・リンガードの事件を捜査し始める。
物語はメリットの捜査と、カールとハーディが被弾した事件の真相に迫る過程が交互に描かれ、謎が謎を呼ぶ衝撃の展開になだれ込んでいく。
果たして、メリットは生きているのか!? そして、生きているなら無事に発見されるのか? また、カールとハーディを撃った犯人は明らかになるのだろうか……!?
・サスペンスドラマが好きな人は絶対お気に入りが見つかるはず!
『特別捜査部Q』の海外での評価&筆者の感想(ネタバレなし)
ユッシ・エーズラ・オールスンの原作小説「特捜部Q」シリーズは、2014年の『特捜部Q キジ殺し』を皮切りに、映画版はこれまでに4本が公開されています。ただし筆者は、小説シリーズも映画版もまだ触れていないため、原作や映画と比較しながらのレビューは出来ないことを、あらかじめご了承ください。
ですが、北欧ドラマはNetflixで結構視聴しているので、北欧ノワールが、どう英語版で“料理”されているのか興味津々でした。結果から言うと、人生で崖っぷちに立たされている特別捜査部Qのメンバーの組み合わせと、彼らが生み出す絶妙なケミストリーを見るだけでも価値があると思いました。
優秀だけど人格に問題ありのカールと、謎めいたシリア出身のアクラム、任務中に起こした事故でPTSDを抱えるローズ、被弾で下半身が麻痺状態になったハーディという、4人とも警察署の出世街道から外れてしまうタイプ。
そんな彼らが、それぞれの個性と捜査能力を発揮して、誰もが死んだと思っている失踪中の検察官を探す展開にドップリと沼ってしまいました。緻密に練り上げられた伏線と手掛り、それらが徐々に回収されていく過程は、まるで次々にピースがはまってパズルが完成するような構造美!
ぜひ、『特別捜査部Q』シーズン2の製作を期待したいところです。特に筆者がイチオシのキャラクター、アクラムの過去や背景がもっと掘り下げられることに期待です♪
『特別捜査部Q』の登場人物&キャスト
カール・マーク(マシュー・グード)
任務中に被弾して重傷を負った刑事。未解決事件を担当する特別捜査部Qの主任刑事に就任する。
アクラム・サリム(アレクセイ・メンヴェロフ)
カールの助手として雇われたシリアの政府難民。謎めいているが、何をさせても超優秀。
メリット・リンガード(クロエ・ピリー)
4年前に失踪した検事補で、死んだものとされている。
ハーディ(ジェイミー・シーヴェス)
カールの相棒。カールと共に任務中に被弾して下半身が麻痺状態になるが、病院のベッドでカールたちの捜査を援助する。
ローズ(リー・バーン)
PTSDなどの症状を抱えている。デスクワークから抜け出すために、特別捜査部Qへの参加を志願する。
レイチェル・アーヴィング(ケリー・マクドナルド)
カールのセラピスト。
モイラ・ジェイコブソン(ケイト・ディッキー)
カールの上司。
『特別捜査部Q』の全あらすじ(ネタバレあり)
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・特別捜査部Qが誕生
・4年前に失踪した検察官の事件
・謎の鳥のロゴマーク
・謎の人物“S”
・検察局が失踪事件に関与?
・法務長官とフィンチの繋がり
・カールとバーディを撃った犯人
・二人のサム
・暴かれる過去、動き出す未来
特別捜査部Qが誕生
リース・パークで、父親アーチー・アレンと連絡が取れないという女性から通報を受けた新米警官アンダーソンが、自宅でアーチーの遺体を発見し、たまたま近くにいたカールと相棒バーディが現場を検証する。そこへ覆面の男が現れて射撃され、アンダーソンは死亡、カールたちは重傷を負う。
事件から4ヶ月後、セラピーに通いながら復職したカールは、未解決事件を扱う新部署「特別捜査部Q」の立ち上げを命じられる。地下の一室に追いやられたカールの元に、助手としてシリア出身のアクラムが配属される。
アクラムが注目したのは、4年前に行方不明となった検察官メリットの事件。彼女は4年前、有力者グラハム・フィンチの事件を担当し、弟ウィリアムと故郷へ向かうフェリーで姿を消した。誰もが彼女は死んだと見なす中、アクラムは「必ず見つかる」と主張する。
4年前に失踪した検察官の事件
カールたちは、ウィリアムが暮らしている施設で得た情報で、メリットの失踪前に彼を世話していたクレア・マーシュを訪れる。ウィリアムは16歳の時に強盗に襲われて頭を負傷し、言語障がいになったことが分かる。
アクラムが主張したように、メリットは高圧室で男女二人組に監禁されていた。彼女は、「自分が監禁されている理由を考えろ」と言われていたが、数多くの被告を刑務所送りにした彼女には敵が多く、4年経っても理由は分からないでいた。
特別捜査部Qに、任務で追跡中に老夫婦を車ではねてしまい、PTSDに苦しむローズと、被弾して下半身麻痺状態で寝たきりのバーディが加わる。
謎の鳥のロゴマーク
警察は、メリット失踪事件の捜査を再開するとテレビで記者会見を行い、それを見て動揺したウィリアムは施設を脱走。メリットが失踪する前に一緒に住んでいた家へ行き、過去に自分が書いた鳥の絵をポケットにしまう。
脱走したウィリアムがクレアの家にいると検討をつけたカールたちが自宅を訪れると、やはり彼はいた。ウィリアムの手ぶりをクレアが通訳し、その鳥のロゴがついた野球帽を被った男が、メリットの家の外とフェリーで目撃されていたことが分かる。
ローズはメリットの故郷モルへ行き、ウィリアムを襲ったヘンリー・ジェニングスが逃亡中にフェリーから落ちて死んだこと、その彼の葬儀にメリットが参列していたことを知る。
謎の人物“S”
メリットの所持品に、彼女が関係を持っていたと思われる人物が書いたカードが見つかり、手掛りを追って辿り着いたホテルで、メリットがジャーナリストのサム・ヘイグと会っていたことを突き止める。
カールたちは、ロッククライミングが趣味の彼が通っていたジムへ聞き込みに行くが、メリットが失踪する直前に、彼が岩山に命綱なしで登って転落死していたことが分かる。
検察局が失踪事件に関与?
カールは上司のモイラから、メリットの失踪事件の捜査が、上層部の圧力で打ち切られていたことを知る。
ローズは手掛りを負い、メリットが刑務所送りにしたカースティに会いに行く。カースティは、メリットが担当したグラハム・フィンチの事件の裁判で証言するはずだった人物。彼女は数年前、女性シェルターでフィンチの妻と知り合い、彼女が夫から酷い暴行を受けていたことを知っていた。しかし、カースティの証言を阻止するため、彼女は何者かに襲われて重傷を負う。
そのことを知ったメリットは、検察局の汚職に関する取材を彼女に申し込んでいたサム・ヘイグに連絡を取ったのだ。
法務長官とフィンチの繋がり
カールの義理の息子ジャスパーが、フィンチの部下だと思われる男に脅され、激怒したカールは男と公の場で大立ち回りを演じて問題に。しかし、男が乗っていた車の情報を辿り、やはり男を送りこんだのはフィンチだったことが判明する。
バーディの調べで、フィンチの裁判中、メリットの上司で法務長官のスティーブン・バーンズの娘が、運転中に何者かの煽り運転で大事故を起こしていたことを突き止める。カールたちは、フィンチがカースティの証言を止めるよう、バーンズに暗黙の圧力をかけたのではないかと仮説を立てる。しかし、スティーブンはカールの職務質問にしらを切り通す。
カールとバーディを撃った犯人
カールは、自分とバーディが被弾した事件の容疑者の面通しを行うが、該当者はいなかった。しかし、一人の男の覆面を取らせる。
カールの夢の中で、その男は事件現場の外で車で待機していたチャーリー・ベルだと明らかになる。彼は、地元の犯罪組織を率いるユージーン・エリングトンの部下だ。また、射殺された新米警官アンダーソンも同じくエリングトンの部下で、事件はアンダーソンを始末するための罠だった可能性が示唆される。
つまり、アーチー・アレンの殺人事件を利用してアンダーソンをおびき出し、待ち伏せしていたエリングトンの部下が発砲。結果的に、カールとバーディはその巻き添えを食ったという仮説が夢で描かれる。しかし最終的に、引き金を引いたのが誰だったのかは明かされなかった。
二人のサム
カールたちはサム・ヘイグについて調べるうちに、メリットが密会していたサムと、クライミングジムに通っていたサムが別人ではないかと推測する。
他のジャーナリストの情報で、カールたちはサムが過去に収容されていた少年院へ行き、ヘンリーの弟ライル・ジェイングスとサムが同時期に収容されていたことを知る。鳥のロゴマークがついたキャップを被ったライルは本物のサムを岩山から突き落として殺し、彼になりすましてメリットに近づいたのだった。
深刻な精神疾患を抱えるライルと母親アルサは、ヘンリーの死をメリットのせいだと恨み続けていた。メリットに夢中だったヘンリーは、彼女を故郷から連れ出す資金を得ようと、メリットの母親の宝石を盗もうとしたが、自宅にいたウィリアムに頭を殴られる。そこへライルが現れ、ウィリアムに激しい暴行を加えたのだった。
暴かれる過去、動き出す未来
メリットは、自分が囚われている原因がヘンリー・ジェニングスに関係していると気づき、監禁しているのが彼の母親と弟ライルだと判明。そして、ライルがサムに成りすましていたこと、彼がウィリアムを襲った犯人だと知って驚愕する。
モルに向かったカールたちは、ライルの父親が経営していた会社の跡地へ向かう。ライルの診療ファイルに、彼が高圧室に少年を閉じ込めたことが書かれていたため、高圧室を探して窓越しにメリットを発見。救出しようとした時にライルが現れてライフルを発砲し、カールは腕を撃たれてしまう。
しかし、とっさにアクラムが投げたナイフがライルの首に命中し、さらに銃でとどめを刺し、ライルは絶命。二人は無事メリットを救出する。
その3ヶ月後。リハビリを続けていたバーディは、松葉杖をついて歩行できるまでに回復。カールは法務長官のスティーブン・ジェニングスを訪れ、フィンチの裁判の件で彼を告発するつもりはないと告げる。
しかし、特別捜査部Qの予算を増やし、アクラムを警部に昇格させることが条件で、これからチームがさらに大きくなることを予感させて幕を閉じる。
・犯罪捜査ドラマが好きな人へ
『特別捜査部Q』の見どころ・考察(ネタバレあり)

出展元:https://www.netflix.com
・高圧室が意味するものは?
・世代で受け継がれる暴力の再演装置
・正反対だからこそ最強!カールとアクラムの名コンビ
・影の主役はアクラム
・あえて真相を描かない選択
高圧室が意味するものは?
『特別捜査部Q』で、メリットが登場する多くのシーンは高圧室に監禁されている場面ですが、この高圧室は単なる物理的な拘束場所にとどまらず、精神的・感情的な囚われの象徴としても機能していると考えられます。
メリットは、過去に告発した人々からの恨みや検察内部の汚職に悩まされながら、自らの正義を問い続けていました。検察官であるメリットが閉じ込められた状態は、正義が封じ込められているようにも感じたし、法務長官や上層部の圧力によって“真実”が闇に葬られてきた構造を、高圧室という密閉空間で具現化しているのかもしれません。
閉ざされた場所で、「なぜ自分が監禁されたのか考えろ」と言われる彼女の姿は、権力に挑んだ者が孤立無援になる状況と重って見えました。
世代で受け継がれる暴力の再演装置
劇中で何度も映し出される高圧室は、ただの監禁場所ではありません。アルサが息子たちに“罰”を与えるために使っていた場所であり、暴力的な“教育”の場でもありました。そんな壮絶な過去が、今度はメリットに向けてそのまま再現されてしまうなんて本当に恐ろしい……。
高圧室は、世代間で繰り返される支配と暴力の象徴とも言えます。ライルの精神の歪みや衝動的な暴力も、この密室で育まれた結果かもしれません。そこに他人であるメリットが巻き込まれ、家庭内の問題が外の世界へと広がっていく怖さが際立っていました。
静かな空間なのに、信じられないほど暴力的……。少しずつ気圧が高くなっていきメリットが苦しむ姿は、どんなホラー映画よりも恐ろしいシーンでした。閉鎖感がさらに恐怖を増し、閉所恐怖症の人は視聴が辛い作品かもしれません。
正反対だからこそ最強!カールとアクラムの名コンビ
なんといっても本シリーズ最大の魅力は、カールとアクラムの凸凹コンビ。切れ者だけどすぐ感情的になってしまうカールは、口が悪くて暴力沙汰も珍しくないトラブルメーカー。一方、アクラムは寡黙ながらも核心を突く観察眼と分析力を持ち、冷静に物事を見つめるタイプ。
そんな正反対の二人だからこそお互いを補完し合い、捜査に深みが生まれるのが面白いところ。感情で動くカールの直感と、沈黙の中に鋭さを秘めたアクラムの論理が噛み合ったとき、予想を超える突破口が開かれる瞬間にゾクゾクしてしまいました。
まるで騒がしい兄と静かな弟のような関係性が、重厚なストーリーの中でもどこかユーモラスなケミストリーを生み出していて、本当に魅力的なコンビだと思いました。
影の主役はアクラム
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端正な顔立ちをしたカールはイケオジだけど、筆者のイチ推しキャラクターはアクラムです💛
いつも寡黙で冷静なのに、必要とあらばカンフーマスターのごとく相手のツボを突いて呼吸困難に陥れたり、信じられない素早さでナイフを抜いて命中させたり、彼がシリアで特殊部隊の兵士か何かだったことを予想させるシーンに釘付け!
思わずカールも「一体シリアで何してたんだ?」と問い詰め、メリットも「どこでそんな技を覚えたの!?」と驚いていましたが、「彼の過去や背景をもっと知りたい!」と思った人は筆者だけではないはず♪ シーズン2に更新されて、アクラムの過去がガッツリ描かれることに期待です!
IMDbによると、アクラム役を演じるアレクセイ・メンヴェロフはスウェーデン出身の俳優。北欧サスペンスドラマ『TOP DOG ―勝者の階段―』や『トム・クランシー/CIA分析官 ジャック・ライアン』などに出演しています。
あえて真相を描かない選択
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劇中では、カールとハーディが被弾した事件の犯人は曖昧なままでした。もしかしたらシーズン2を想定して、伏線を残したままにしているのかな?とも思ったのですが、そうでないとしたら何か別の理由があるのでしょうか?
事件の背景は、エリングトンの犯罪組織や警察内部の汚職、検察上層部との癒着など複数の力が絡み合っていて、誰が引き金を引いたのかという一点だけでは語れない複雑な部分があります。真犯人を明らかにしないことで、「こんなに見えない力がうごめいてる!」と強調していたのかもしれません。
また、犯人が不明のまま時間が経過したことで、その間にカールは新部署を任され、メリットの事件を担当したことで成長し、“個人的な復讐”ではなく、“もっと大きな問題”に視点を移すきっかけになったと言えるかもしれません。
その過程でカールはセラピーを受けて問題に向かい、義理の息子とも関係を修復し、第1話と最終話では別人のように変わりましたからね。
そして注目したいのは、カールを演じたマシュー・グード。マシューは、その高貴な美しいルックスが“災い”して、英王室ドラマ『ザ・クラウン』や時代劇ドラマ『ダウントン・アビー』などで貴族や王子様的な役を演じることが多く、かなりステレオタイプ化されがちでした。
でも本作では、トラウマを抱えて悪態つきまくりの不器用な男、カールを好演して新境地を開拓! ルックスに甘えない骨太な演技が、シリーズの緊張感と人間ドラマをしっかり支えていたのが印象的でした。
・ジワジワくるサスペンスが好きな人にイチオシ!
『特別捜査部Q』のまとめ
『特別捜査部Q』は、サスペンスの面白さだけでなく、心に爪痕を残す人間ドラマが魅力。暴力の連鎖や社会の闇に切り込みつつ、カールとアクラムの凸凹バディが生むケミストリーもたまりません!
重厚だけど、随所にピリッとしたユーモアも散りばめられた見応え抜群のシリーズ。ぜひ、Netflixでチェックしてみてください♪
『特別捜査部Q』の視聴方法
『特別捜査部Q』は、Netflixで独占配信中! VOD(ビデオ・オン・デマンド)の中でもダントツにコンテンツ量が多いNetflix。使ったことがない方も、この機会にぜひ♪
この他にもNetflixでは、同シリーズ系統のドラマが多数配信中です。「次に観たい作品が見つからない…」という方は、以下も合わせてどうぞ。
『特別捜査部Q』系のNetflixおすすめドラマ3選
北欧ノワールやダークなサスペンス&ミステリーが好きな人は、ぜひチェックしてみてください! お気に入りが見つかるはずです♪


