Netlix医療ドラマ『パルス』はマイアミの病院を舞台に、チーフレジデントの上司をセクハラで告発した主人公ダニーを中心に描かれるシリーズ。本作で何が起こるのか、キャストやあらすじなどネタバレあり・なしで#MetTooやフェミニズムの観点でダイブイン(考察)していきます!
【本記事の注目点】
・ネタバレを踏みたくない方へ
前半ではネタバレなしのあらすじ&海外評価・筆者の感想を紹介しますので、安心して作品を視聴すべきかどうか判断してみてください。
・ネタバレありで深掘りしたい方へ
後半ではネタバレありの全あらすじ&見どころ・考察で、作品の魅力を余すことなくお届け! すでに視聴済みの方も、おさらいとしてお楽しみください♪
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『パルス』の概要
『パルス』のあらすじ(ネタバレなし)
舞台は、フロリダ州マイアミにあるマグワイア病院の外傷センター。ER(救命治療室)では、チーフレジデンスのザンダー・フィリップスがセクシャルハラスメントで告発され、停職になったという噂でもちきりだった。ERのナタリー・クルス部長は、彼の後任として最有力候補のサム・イライジャではなく、ダニー・シムズを暫定チーフに指名する。
大型のハリケーンがマイアミに接近する中、数多くの怪我人が搬送され、クルスは人手が足りないことを理由に停職中のフィリップスを仕事に復帰させる。告発した側のダニーと告発された側のフィリップスが職場で顔を合わせる気まずい状況で、フラッシュバックシーンを交えながら、現在と過去が交差する形で二人の間で何が起こったのかが明らかになっていく……。
『パルス』の海外での評価&筆者の感想(ネタバレなし)
『パルス』は、Neflixで初となる1話完結型の海外ドラマシリーズ。各話で登場する患者や医療処置などのサブプロットは1話完結ですが、全話を通じて一貫して語られるのがダニーとフィリップスの関係です。
セクハラや性的暴行の被害を告白・共有する「#MeToo運動」が世界を席巻し、今もなお女性蔑視や差別の問題は深刻な社会課題となっています。それなのに、『パルス』は医療処置や数多く登場するサブキャラクターのプロットで時間を取られて、ダニーとフィリップスの問題が中途半端に描かれた印象が否めません。
しかも、白黒がハッキリしたセクハラではなく、かなりグレーゾーンの問題を取り上げているだけに、医療現場を舞台にしつつ、その点に絞ってしっかりと描くべきだったと思いました。何がどう“グレー”なのかは、『パルス』の見どころ・考察(ネタバレあり)で掘り下げているので、チェックしてみてください。
『グレイズ・アナトミー』や『レジデント 型破りな天才研修医』といった、人気医療ドラマと差別化を図るために社会問題を一貫したテーマとして投入したのかもしれませんが、その狙いが大きく外れてしまったように感じました。
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『パルス』の登場人物&キャスト
医学生でソフィーの理解者となる。
『パルス』の全あらすじ(ネタバレあリ)
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以下、物語の展開を「現在」と「過去」に分けてまとめました。
・セクハラで停職になったフィリップス(現在)
・ダニーとフィリップスの関係(過去)
・同僚にバレた二人の交際(現在)
・仕事と恋の板挟みになったダニー(過去)
・告発を取り下げたダニー(現在)
・フィリップスの転院の理由は!?
・ダニーとフィリップスの和解
・新チーフレジデンスは…!?
❖脇役のあらすじ
・トム・コール
・ソフィー&カミラ
セクハラで停職になったフィリップス(現在)
舞台は、フロリダ州マイアミにあるマグワイア病院の外傷センター。ER(救命治療室)では、チーフレジデンスのザンダー・フィリップスがセクシャルハラスメントで告発され、停職になった噂でもちきりだった。ERのナタリー・クルス部長は、彼の後任として最有力候補のサム・イライジャではなく、暫定チーフとしてダニー・シムズを指名した。
大型のハリケーンがマイアミに接近中で、試合に向かっていたサッカーチームを乗せたスクールバスが大事故を起こし、大勢のティーンエイジャーが患者として運び込まれ、ダニーはクルスの娘ヴェロが運び込まれる可能性を知る。
しかし、クルスの仕事に支障が出てはいけないと察し、ダニーははっきりとしたことが分かるまで、そのことをクルスに知らせないことに決める。しかし、娘が搬送されたことを知ったクルスはシムズを非難。また、クルスは医師の人手が足りないことを理由に、停職中のフィリップスを仕事に復帰させる。
ダニーとフィリップスの関係(過去)
フィリップスは、レジデンスの立場で、突然ケネディ病院からマグワイア病院に転院になったことで不審がられていた。ダニーが彼をセクハラで告発した理由の一つは、ケネディ病院でも同じ告発をした女性がいるという噂を耳にしたからだった。
フィリップスがマグワイア病院に就任して間もなく、ダニーは彼にディナーに誘われるが断ったことがあった。その後、ダニーは仕事中に施術室から出ていくようフィリップスに指示され、今後も彼の誘いを断ったら、これから何をされるか分からないから心配だと本人に気持ちをぶつける。その言葉を聞いた彼は、ダニーのことが好きだと想いを伝える。
ダニーも彼の存在が気になり始め、ある夜に二人は男女の関係になる。ダニーは彼に、交際を続けるなら人事部に報告をするべきだと話すが、彼はこの関係をもう少し見極めた方がいいし、ダニーが昇進目当てて上司と寝たと思われるリスクがあると言い、ダニーは困惑する。
同僚にバレた二人の交際(現在)
仕事中にダニーとフィリップスが口論になり、彼がみんなの前で二人が同棲していたと口を滑らし、同僚たちは驚愕する。二人が真剣交際をしていたなら、なぜダニーがフィリップスをセクハラで訴えたのか疑問が残るからだ。
ダニーは親友で同じくレジデント医師のサム・イライジャに、実はフィリップスと1年間交際していたと明かす。サムはダニーに、「それはセクハラではなくて交際期間だ」と言う。サムはダニーを支えてきた良き友人だが、フィリップスとの恋愛のことも、チーフレジデンスの座を望んでいたことも黙っていたダニーを信用できない気持ちが沸いてしまう。
仕事と恋の板挟みになったダニー(過去)

出展元:https://variety.com
最初こそ、フィリップスの恋のアプローチを避け、上司と部下という関係で交際することを心配していたダニーだが、彼と恋に落ちていった。しかし、上司の彼がクルスにダニーを次のチーフに推薦したら、その座を狙うサムがチャンスを失うことになる。またダニーは、フィリップスとの交際を公にしたら、昇進のために上司と寝た女だと周りに思われることを心配する。
ダニーはレジデントの泊りがけのパーティーでも、フィリップスにチーフの指名には関わらないでほしいと伝えて喧嘩になるが、翌日、お互いに愛を伝えて仲直り。そして、フィリップスは昇進のオファーがあったことを伝え、この交際を公表しようと提案する。
しかしダニーは、「彼の恋人だからチーフに選ばれたと思われたくないから公表したくない」言い、彼が公表したがるのは、上司としての立場を守るためだと責め立て、大喧嘩に発展。動揺したダニーは妹ハーパーの部屋に行って全てを打ち明け、妹に人事部で報告するべきだと勧められ、告発に至ったことが明らかになる。
告発を取り下げたダニー(現在)
娘の件でクルスとダニーは少しギクシャクしたこともあったが、クルスは上司として常にダニーを支えていた。そんなクルスに、「フィリップスを告発した困難を乗り越えることは難しいだろう」と言われ、ダニーは最終的に告発を取り下げることを決める。
フィリップスの転院の理由は!?
ダニーは告発を取り下げたが、マイアミの著名な医者一家出身であるフィリップスの母親が、ダニーを解雇するようクルスに圧力をかけていることを知る。そこでダニーは、そのことをフィリップスに明かし、両親を説得してほしいと頼む。
フィリップスは、女性にセクハラで告発されたから転院になったのではなく、医療過誤で患者を亡くし、その事実を両親が隠蔽して秘密保持契約を結んだことをダニーに明かす。そのことをネタに両親を揺すれば、解雇を阻止できると助言する。
ダニーとフィリップスの和解
フィリップスは、最初からダニーの気持ちに耳を傾け、アプローチを止めて身を引くべきだったと謝罪する。二人は今も愛しているとお互いの気持ちを伝え、ダニーは自分がクビになれば フィリップスの部下ではなくなるからやり直せるかもしれないと言う。
新チーフレジデンスは…!?
来年度より、外傷センターはERと外科部門に分かれることになり、ERの新部長としてパトリック・サンチェスが就任することが決まる。しかし、彼はダニーを推薦したクルスの意見に耳を貸さず、代わりにサムを新チーフレジデントに任命。ダニーは少しガッカリしがならも、サムは適任だと祝福する。
フィリップスはダニーに、秘密保持契約を破ってケネディ病院での医療過誤を審査委員会に報告したと打ち明ける。ラストシーンは、全てから解放されたダニーが下着のまま海に入り、波と戯れるシーンで終了する。
脇役のあらすじ
トム・コール
傲慢で冷淡なレジデント3年目のコールは超プレイボーイ。看護師のキャスとカジュアルな交際を楽しみつつ、救命士のニアのことも気になっている。ハリケーン中に町を巡回していたニアが事故に巻き込まれて腹部に重傷を負い、コールの手術により一命を取り留める。二人は診療で顔を合わせる度に距離を縮めていくが、医師と患者が親密になることは許されない。
しかし、ニアとの関係を上司のサリアーノ医師に知られてしまい、コールは重大な警告を受ける。またキャスから、「冷淡な性格を直して人に親切にしないと、徳を積めないわよ」と説教され、自分の問題と向き合うようになる。
ソフィー&カミラ
インターンのソフィーと医学生カミラは全く違うタイプで、最初こそソリが合わなかったが、次第にお互いを支えるようになって良い友人同士に。しかし、ソフィーはカミラに友情以上の気持ちを抱くようになるが、カミラに男性の婚約者がいることを知ってショックを受ける。
『パルス』の見どころ・考察(ネタバレあり)

出展元:https://www.forbes.com
以下のポイントに注目して考察を深掘りしていきます。
・「合意」の裏に潜むパワーバランス
・#MeTooの視点で見る「同意」と「セクハラ」の境界線
・ダニーの一言にドン引き…!
・エンディングが象徴するものは!?
「合意」の裏に潜むパワーバランス
本シリーズは1話完結型のの医療ドラマですが、全話を通じて、「なぜ、ダニーはフィリップスをセクハラで訴えたのか!?」という一貫したプロットが存在します。
ダニーとフィリップスの関係は、一見すると「両者の合意に基づいた恋愛」に見える構図でした。ですが、上司と部下である二人の間にパワーバランスが存在しているのは明らか。しかも、彼はチーフレジデンスとしてダニーの評価に関わる立場にあり、人事や昇進に影響力を持つ存在です。
このような上下関係が存在する職場では、たとえ双方に恋愛感情があったとしても、部下が「断ったら面倒な立場に追い込まれるかもしれない」と感じた時点で、その関係性には権力のアンバランスが生じてしまいます。
実際、ダニーもフィリップスからディナーに誘われた際、「今後も断ったら何をされるか分からない」と不安を吐露していました。彼女が、その正直な気持ちを伝えた時点で彼は引き下がるべきだったし、ダニーのことが好きなら、最初から人事部に交際を報告しておくべきだったのではないでしょうか。
#MeTooの視点で見る「同意」と「セクハラ」の境界線
おそらく視聴者、特に男性の中には、「二人の関係は“セクハラ”とは呼べないのでは!?」と思った人もいるのではないでしょうか。セクハラや性的暴行の被害を告白・共有する国際的な「#MeToo運動」が世界を席巻した当時、「嫌なら断ればよかったじゃないか」という声が上がっていたからです。
もっともらしい意見かもしれませんが、「権力の差」や「立場の強弱」といった見えにくい力関係が存在する場合、「嫌なら断ればいい」という解決法が通用しにくいこともあります。上司と部下、有名監督と無名女優、教師と生徒といった関係です。そういった関係では、「断ったら不利な立場に追い込まれるかもしれない」という恐れがあって、簡単には「NO」とは言えないこともあるでしょう。
つまり、「表向きは合意に見える関係」でも、実はパワーバランスによって、そうせざるを得なかった可能性があります。ダニーがフィリップスに本気で恋をしたから、二人の間にある問題がグレーゾーンと化してしまいましたが、二人の関係はこういったパワーバランスにより始まり、成り立っていたと思います。したがって、健全で平等な恋愛関係ではなかったと言えるのではないでしょうか。
本シリーズは、「合意の裏に潜むパワーバランス」というグレーゾーンに焦点を当てているのに、他のサブプロットに時間を取られ過ぎて掘り下げ方が足りず、ポイントが不明瞭な印象になっていたように感じます。人によっては、まるでダニーが昇進のためだけに、フィリップスをセクハラで告発して落とし入れたように見えてしまうかもしれません。
なので、余分なストーリーラインを省いて5話ぐらいに短縮し、そのグレーゾーン存在する「合意」と「セクハラ」の境界線をしっかり説明し、医療現場を舞台にした社会派ドラマとしてセクハラ問題を描いた方がよかったのでは……!?と思いました。
ダニーの一言にドン引き…!
最終的にダニーは告発を取り下げ、フィリップスと腹を割って話をして理解し合うことが出来ました。そこで終わっていればよかったのに、ダニーが「自分がクビになれば、フィリップスの部下ではなくなるからやり直せるかもしれない」と言ったシーンに、筆者はドン引き! 「マジかよ…!?」と耳を疑ってしまいました(汗)。
それってダニーが、「自分とフィリプスが部下と上司だったから上手くいかなかった」と思っているということですよね。そこが問題のポイントではないことは疑いの余地はありません。問題なのは、ダニーが尊重されていなかったこと、フィリップスはその状況に対して無自覚だった、あるいは自分に都合よく目をつぶっていたことです。
ダニーが彼から感じていた「圧力」は、明確な命令や強制ではなかったかもしれません。ですが、上司の好意を断ることで不利な立場に追いやられたり、評価に響くかもしれないという不安は、彼女にとって間違いなく“現実的なプレッシャー”だったはず。
それをフィリップスは、「そんなつもりはなかった」「好意だった」と済ませてしまいました。その時点で、すでに彼はダニーの感情を“対等なもの”として見ていなかったと言えます。
つまり立場がどうであれ、「人として相手を尊重する姿勢がなかった」ことこそが最大の問題だったのに、「自分がクビになれば、フィリップスの部下ではなくなるからやり直せるかもしれない」という言葉がトンチカンすぎて、言葉もありませんでした……。
フィリップスが自分の言動を反省してダニーに謝罪したとはいえ、あの告発や修羅場を体験した二人が、仮に復縁してもハッピーエンドとはならないでしょう。
エンディングが象徴するものは!?
ラストは、ダニーが“すべてを脱ぎ捨てる”かのごとく下着姿になり、海で波と戯れるシーンで終了し、自己再生や解放の象徴のようにも感じられました。
周囲の目や過去のしがらみ、上下関係などから自分を解き放った瞬間として、フェミニズム的なエンディングとも捉えられます。それだけに、「自分がクビになれば、フィリップスの部下ではなくなるからやり直せるかもしれない」というセリフを、ダニーに言わせたのは間違いだったのでは……という思いが拭い切れません。
『パルス』で気になったキャスト
ダニー役のウィラ・フィッツジェラルド
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医師として強い責任感と意志を持ち、毅然と自分の主張を伝えるために声を上げることを恐れないダニー役を好演したのは、ウィラ・フィッツジェラルド。1991年1月17日生まれのウィラは、カントリーミュージックの聖地であるテネシー州ナッシュヴィル出身です。
IMDbによると、なんとウィラは超名門イエール大学で演劇学の学士号を取得した秀才。これまでの出演作には、Amazonのアクションドラマ『ジャック・リーチャー ~正義のアウトロー~』シーズン1や、Netflixのホラードラマ『アッシャー家の崩壊』、ドラマ版『スクリーム』などがあります。
フィリップス役のコリン・ウッデル
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ダニーにセクハラで告発され、厳しい立場に立たれたザンダー・フィリップス役を繊細な演技で体現したのは、カリフォルニア州サンフランシスコ生まれのコリン・ウッデル。
IMDbによると、1991年12月20日生まれで現在33歳の彼は、人気アクション映画『ジョン・ウィック』シリーズの前日譚ドラマ『ザ・コンチネンタル ジョン・ウィックの世界から』に主演して以来、脇役俳優を卒業した感があります。その他には、サスペンスコメディドラマ『フライト・アテンダント』や映画『アンビュランス』、『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』などに出演。
ヴァンパイア・ホラードラマ『オリジナル』などで知られるダニエラ・キャンベルと、10年以上婚約しています。
『パルス』のまとめ
Neflixで初となる1話完結型のドラマシリーズ『パルス』は、セクハラ問題を取り上げた意欲作ですが、施術・治療シーンや脇役のサブプロットなど詰め込み過ぎて、重要なテーマが散漫な印象になってしまったのが残念でした。
ですが、ドロドロした恋愛や医療ドラマが好きな人は楽しめると思います。ぜひ、Netflixでチェックしてみてください♪
『パルス』の視聴方法
『パルス』はNetflixで独占配信中! VODの中でもダントツにコンテンツ量が多いNetflix。使ったことがない方も、この機会にぜひ♪
この他にもNetflixでは同シリーズ系統のドラマが多数配信中です。「次に観たい作品が見つからない…」という方は、以下の記事も合わせてどうぞ。
『パルス』系のNetflixドラマ3選
『パルス』のような、女性蔑視や性犯罪をテーマに描いた作品をおみのがしなく!
・『アンビリーバブル たった1つの真実』
2人の女性刑事が類似した2つの性暴行事件を追う中で真実に迫り、制度の欠陥と被害者の声を信じることの重要性を浮き彫りにしていくシリーズ。
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デボラ・フェルドマンの自伝を基に、宗教的束縛からの解放と自己発見の旅をリアルに描いた傑作シリーズ。
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