Netflixドラマ『セイレーンの誘惑』は、カルト的なライフスタイルを送るセレブな動物保護活動家の住み込み秘書として働く妹を、姉が救い出そうとするストーリー。かなり濃厚なプロットが展開される本シリーズで何が起こるのか、キャスト紹介やあらすじを交えながら、ネタバレあり・なしでダイブイン(考察)していきます♪
【本記事の注目点】
・ネタバレを踏みたくない方へ前半ではネタバレなしのあらすじ&海外評価・筆者の感想を紹介しますので、安心して作品を視聴すべきかどうか判断してみてください。
・ネタバレありで深掘りしたい方へ
後半ではネタバレありの全あらすじ&見どころ・考察で掘り下げ、作品の魅力を余すことなくお届け! すでに視聴済みの方も、おさらいとしてお楽しみください♪
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『セイレーンの誘惑』の概要
『セイレーンの誘惑』のあらすじ(ネタバレなし)
『セイレーンの誘惑』は、モリー・スミス・メッツラーの舞台劇『Elemeno Pea(原題)』を下敷きにしたシリーズ。
認知症の父親の世話が手に負えなくなったデヴォンは、妹シモーネの助けを借りようと何度も電話するが、一向に連絡が取れない。そこで、シモーネが住み込み秘書として働いている屋敷を探し出し、突然訪問する。
シモーネの上司は熱心な猛禽類の保護活動家で、社交界の名士ミカエラ・ケラ。デヴォンは、シモーネとミカエラの上司と部下のバウンダリーを越えた、不適切とも言える親密な関係を懸念する。
カルト的なライフスタイルで人々を魅了するミカエラの周りは彼女の信奉者で溢れ、シモーネは洗脳され、精神的に支配されたかのように彼女を崇拝している。デヴォンはシモーネの目を覚ませさて、故郷バッファローに連れて帰ろうと目論むが、次々に思いがけない出来事が起きてしまう……。
果たして、無事にデヴォンはシモーネを連れて帰ることが出来るのか……!?
・アンサンブル・ヒューマンドラマが好きな人におすすめ!
『セイレーンの誘惑』海外での評価&筆者の感想(ネタバレなし)
『セイレーンの誘惑』はブラックユーモアを散りばめつつ、幻想的ながらも不穏な雰囲気に包まれた、どこか捉えどころのないヒューマンドラマシリーズ。
タイトルにある“セイレーン”とは、美しい歌声で航海中の男たちを惑わし、破滅に導くギリシア神話の海の怪物。劇中では、デヴォンとシモーネがトラブルに陥った時の合言葉として使われます。
まるで、洗脳するかのように周囲の人を惹きつけるミカエラの存在は、まさに“セイレーン”のよう。人々を静かに従わせていく姿にはカルト的な怖さがあって、そんなミカエラの世界に染まっていくシモーンと過去に囚われ続けるデヴォン、姉妹の確執と愛憎といったダークなテーマにブラックユーモアが絶妙なバランスで投入され、作品のジャンルを特定できない、独特かつ不思議な雰囲気を醸し出しているところがポイント。
また、『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル』に通じる富裕層と従業員の階級差も盛り込まれ、様々なテーマを扱っていてトーンの転換も少なくないのですが、全体的に散漫にならずに上手くまとまっている印象でした。
筆者は、その掴みどころがないのに妙な中毒性のある世界観に引き込まれ、視聴後にドップリと余韻に浸ってしまいました。
ダークコメディやミステリー、ディープな人間関係を描いたヒューマンドラマが好きな人におすすめのシリーズです♪
・ジワジワ引き込まれる『ホワイト・ロータス』は見応えタップリ!
『セイレーンの誘惑』の登場人物&キャスト
ミカエラ・ケラ(ジュリアン・ムーア)
熱心な猛禽類の保護活動家で、カルト的なライフスタイルで人々を魅了している社交界の名士。
シモーネ・デウィット(ミリー・アルコック)
ミカエラの住み込み秘書。毒親の父と絶縁状態で、姉デヴォンのこともずっと避けて暮らしている。
デヴォン・デウィット(メーガン・フェイヒー)
シモーンの姉。認知症になった父親の世話をしていて、アルコール依存症の問題を抱えている。
ピーター・ケラ(ケヴィン・ベーコン)
ミカエラの夫で、ヘッジファンド界の大物で大富豪。元妻を捨ててミカエラと結婚した。
イーサン(グレン・ハワートン)
ピーターの親友で、女たらしで有名な資産家。シモーネと付き合っている。
ブルース・デウィット(ビル・キャンプ)
デヴォンとシモーネの父で毒親。痴呆症で、過去に飲酒の問題を抱えていた。シモーネとは絶縁状態。
『セイレーンの誘惑』の全あらすじ(ネタバレあり)
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・妹を連れ戻そうとするデヴォン
・イーサンが行方不明に
・シモーネと父親の再会
・姉妹の大喧嘩
・ミカエラとシモーネが決裂
妹を連れ戻そうとするデヴォン
認知症の父親の世話が手に負えなくなったデヴォンは、妹シモーネの助けを借りようと、何度も姉妹のSOS信号である「セイレーン」という合言葉を送るが、一向に連絡が取れない。そこで、シモーネが住み込み秘書として働いている屋敷を探し出し、突然訪問する。
シモーネの上司は熱心な猛禽類の保護活動家で、社交界の名士ミカエラ・ケラ。デヴォンは、シモーネとミカエラの上司と部下のバウンダリーを越えた、不適切とも言える二人の親密すぎる関係を懸念する。
ケラ家の邸宅は監視カメラだらけで、従業員の食べ物まで管理されていて普通ではない。さらにデヴォンは、ミカエラの夫ピーターの前妻をミカエラが崖から突き落としたという噂を聞き、島に残って妹を故郷バッファローに連れて帰る計画を立てる。
イーサンが行方不明に
シモーネは、ピーターの親友でかなり年上の資産家、イーサンと隠れて付き合っていた。しかし、その交際をミカエラとピーターに知られたことで大きく動揺し、パニック発作を起こしてしまう。
その翌日にシモーネは、イーサンとの交際を黙っていたことをミカエラに謝り、話の流れで母親の自死の道連れにされかけたが、デヴォンに救われた過去を打ち明ける。
ミカエラが可愛がっていた鳥の葬儀の後、彼女はイーサンと話をするために崖の方へ行くが、その直後に彼が姿を消してシモーネは心配する。
デヴォンは猫を被って問題を起こさないようにしていたが、ミカエラに鼻を突かれた時に魔法にかかったような状態になり、気が付いたらミカエラの取り巻きたちとガラ用のドレスのショッピングへ行っていた。
シモーネと父親の再会
ミカエラは、ピーターの日本への主張が嘘で浮気をしているのではないかと疑っていて、シモーネに尾行を命じるが、彼が潮干狩りのためにビーチへ行った時に見つかってしまう。仕方なく一緒に貝を採っていた時に、シモーネはピーターにキスをされて驚き、慌ててその場から去る。
シモーネは、いまだに連絡の取れないイーサンのことが心配になって彼の家へ行くと、しばらくして彼が帰宅。ところが、なんとシモーネと絶縁状態になっている父ブルースを連れていた。しかも、イーサンにひざまずいてプロポーズされ、パニックになったシモーネはその場から逃げ出す。
姉妹の大喧嘩
デヴォンとシモーネは腹を割って本音をぶつけ合う。シモーネは、母の死後に姉が家を離れたことで置き去りにされ、父から十分な世話を受けられず、里親に出された過去が許せないとブチまける。そして、父を翌日にバッファローへ帰すつもりだと告げると、デヴォンは反発し、二人は激しい口論となってしまう。
最近、ミカエラとの関係がギクシャクしていたピーターは日本への出張が嘘だと認め、孫の洗礼式に行っていたと打ち明ける。彼の成人した子どもたちは、両親の離婚の原因になったミカエラを嫌っているため、言い出せなかったのだ。
ミカエラとシモーネが決裂
ミカエラは、イベントの写真を撮りに来たヴァニティ・フェアのフォトグラファーが隠し撮りした、ピーターとシモーネのキス写真を見せられて大きなショックを受ける。
崖から落ちて大怪我を負ったイーサンを見舞い、病院からシモーネが部屋に戻ると、全て荷物がパッキングされ、段ボール箱の上にピーターとのキス写真が置かれていた。そこへミカエラが現れて彼女に解雇を伝える。
激しく動揺したシモーネはピーターに写真のことを告げ、それを知った彼は、その件で揺すられ続ける結婚生活に耐えられないと言い、ガラの真っ只中に家を出て行くようミカエラに伝える。
ミカエラの代わりに、ゴージャスなドレスに身を包んだシモーネがパーティーに参加し、その姿を見たデヴォンは呆気にとられる。一緒にバッファローに帰るものだと思っていたが、シモーネはピーターに愛していると伝えられ、島に残ることに決めたと姉に伝える。
デヴォンは、それは略奪愛だと責めるが、シモーンはその状況に興奮している。怒りを通り越して呆れた様子のデヴォンは、父と一緒にフェリーに乗って帰路へ。すると、屋敷を追い出されたミカエラとフェリーで遭遇し、意外と落ち着いた様子のミカエラはデヴォンに「シモーンは怪物ではないよ」と伝え、ラストはシモーネがドレス姿で崖にたたずむシーンで終了する。
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『セイレーンの誘惑』の見どころ・考察(ネタバレあり)
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・“セイレーン”に込められた意味
・ミカエラ=現代のセイレーン
・姉妹の愛憎―もう一つの「セイレーンの誘惑」
・ラストシーンが象徴するもの
・島=現実から切り離された空間
“セイレーン”に込められた意味
タイトルにある“セイレーン”とは、美しい歌声で航海中の男たちを惑わし、破滅に導くギリシア神話の海の怪物。劇中では、デヴォンとシモーネがトラブルに陥った時の合言葉として使われますが、「誰かに惹かれて破滅しそうな時に鳴らす警報」のメタファーとして機能していたように感じます。
シモーネは、まるでセイレーンの歌声のように導き、洗脳するかのように周囲の人を惹きつけるミカエラの世界に染まり、すっかり支配されてしまいました。シモーネにその自覚はありませんでしたが、そんな妹の状況を知ったデヴォンは、妹が発する“警報”を察知してしたのではないでしょうか。
ミカエラ=現代のセイレーン
ミカエラは、猛禽類の保護活動家という一見高潔な立場にありながら、屋敷を監視カメラで埋め尽くし、従業員の食事までコントロールする支配的なキャラクター。彼女は、シモーネや他の従業員たちにとって単なる上司ではなく、セイレーンの歌声のように周囲を惑わし、精神的な服従と依存を強いていく存在です。
その姿はまるで神話のセイレーンや魔女のようで、元妻を捨ててミカエラに走ったピーターとシモーネは、彼女の“歌声”に惑わされた犠牲者のように思えました。
姉妹の愛憎──もう一つの“セイレーンの誘惑”
またデヴォンとシモーネも、ある意味で「セイレーンの歌声」のような関係だと言えるかもしれません。愛しているからこそ裏切ってしまい、そばにいたいのに憎しみが邪魔をしてしまう……。そんな複雑な感情に囚われた姉妹は、まさに“近づけば壊れ、離れれば罪悪感に苛まれる”ような関係です。
デヴォンは母の死後、妹を残して家を出た罪悪感を抱えていて、それが「シモーネを取り戻したい」という衝動に繋がっているのではないでしょうか。幼少期から背負わされてきた責任感と、過去への後悔が入り混じる彼女の姿は、「心の傷とメンタルヘルス」という観点からも非常に示唆に富んでいます。心の問題は目に見えづらくて自覚しづらいものですが、デヴォンの姿には、自分を責めがちな人が共感できる要素が多いと感じました。
一方のシモーネは、ずっと姉の愛を求めていたはずなのに置いていかれたことが許せず、心のどこかでデヴォンを責め続けている……。この姉妹の関係性って、離れられないけど近づくと傷け合ってしまい、どこか“セイレーンに惹かれて破滅する船乗り”のようだと思いました。
ラストシーンが象徴するもの
エンディングで、ゴージャスなロングドレスに身を包み、荒々しい海を目下に崖の上に立つシモーネの姿は、まさに“セイレーン”そのもの。このシーンは、シモーネが誰にも支配されることなく、ついに“自分の歌声”を手に入れたことを象徴していたのかもしれません。
島=現実から切り離された空間
筆者が気になったのは、ラストで島から出たミカエラが急に穏やかになって、地に足が着いているように見えたことです。また、ピーターは島で暮らすようになってから妙な夢を見るようになり、夢を見ないというデヴォンに、「島にいたら見るようになる」といったシーンが心に引っかかっています。
島は、物理的に「隔絶された場所」です。大海原に囲まれて簡単に出入りできないため、数多くの作品で、「心理的に逃げ場のない世界」や「閉じ込められた精神空間」として表現されることが多く、本作でもその典型的な使われ方をしていたように思います。
島という閉塞的な空間が、登場人物たちの欲望やトラウマを無意識のうちに引き出していたかもしれません。もしそうだとしたら、島自体が登場人物を“セイレーン化”させているとも言えそうです。
『セイレーンの誘惑』のまとめ
『セイレーンの誘惑』は、ギリシャ神話の“セイレーン”をモチーフに、姉妹の愛憎劇とミステリアスな人間関係がブラックユーモアを交えて描かれるシリーズ。
エピソードを見進めていくうちに、捉えどころのない魅力にジワジワを引き込まれてしまうはず。かなり中毒性が高い『セイレーンの誘惑』を、ぜひNetflixでチェックしてみてください♪
・ピーター役のケヴィン・ベーコン主演のホラー・アクションドラマ
『セイレーンの誘惑』の視聴方法
『セイレーンの誘惑』はNetflixで独占配信中! VOD(ビデオ・オン・デマンド)の中でもダントツにコンテンツ量が多いNetflix。使ったことがない方も、この機会にぜひ♪
この他にもNetflixでは、同シリーズ系統のドラマが多数配信中です。「次に観たい作品が見つからない…」という方は、以下も合わせてどうぞ。
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