Netflix映画『偽りなき日々』ネタバレ考察 正義とは何か?アナーキストの誘惑と破滅の先にある真実

『偽りなき日々』の切り抜き
出展元:https://www.netflix.com/

スウェーデン発のNetflix映画『偽りなき日々』は、刺激を求めてアナーキスト集団に加わった法学生が、法の外で生きる姿を描くスリラー。この記事ではキャストやあらすじの紹介に加え、ネタバレなしの感想とネタバレありの考察でダイブインしていきます!


【本記事のポイント】

ネタバレなしで知りたい方へ
前半ではあらすじ・海外評価・筆者の感想を紹介。視聴前の参考にどうぞ。

ネタバレありで深掘りしたい方へ
後半では全あらすじと見どころ・考察をたっぷり紹介。視聴済みの方もおさらいに◎

※目次から各セクションにジャンプできます。

『偽りなき日々』の概要

基本情報を押さえておきましょう♪

製作:Netflix
ジャンル:スリラー、社会派、心理サスペンス、ヒューマンドラマ
配信日:2025年7月31日
製作国:スウェーデン
上映時間:2時間2分
原作:クリスチャン・ウンゲ
監督:ミカエル・マーシメイン

『偽りなき日々』のあらすじ(ネタバレなし)

『偽りなき日々』は、クリスチャン・ウンゲによる小説の映画化。

野心を胸に抱いたサイモンは、これから本当の人生が始まると信じて、期待に胸を膨らませながらルンドに到着する。しかし、ロースクールでの生活にすぐに失望してしまう。

んな中、激しい抗議デモの最中に、彼はアナーキスト的な若い女性マックスと出会って恋に落ちる。彼女は、過剰と嘘と大きな危険に満ちた世界で彼を魅了するが、サイモンは取り返しのつかない事態になって初めて、その代償に気づくことになる──

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『偽りなき日々』海外での評価&筆者の感想(ネタバレなし)

【IMDb】
10点中5.7
【筆者の評価】
総合評価:★★★☆☆
ストーリー:★★★☆☆
エンタメ性:★★★☆☆
感動:★★☆☆☆

視聴前に予告編を見た印象

予告編は、サイモンとマックスが高級時計店を訪れ、明らかに二人の手の届かない高価な時計を見せてもらうシーンからスタート。

その最中、店内の客が突然発作を起こして倒れ、マックスは外へ。直後、サイモンに電話をかけて「その時計を盗んで。これはテストよ」と告げます。動揺したサイモンは、言われるままに時計を盗んで外へ出ますが、警報が鳴り響いてしまいます。

そこへ仲間と思われる男性が現れ、二人はそのまま逃走。映像はこの場面で終了します。

マックスが強いた盗みは、明らかにアナーキストグループに加入するためのテストのようです。どうやら、サイモンはこうして負のスパイラルへと落ちていく模様。彼を待ち受ける闇を想像すると、視聴するのが何だか怖い気がします(汗)。

ネタバレなしの感想

本作は、とにかく若さゆえに一瞬で価値観を塗り替えられ、シーモンが抗いがたい負の力に吸い込まれていく姿恐ろしくもあり、また純粋で危うい青春物語とも言える作風が印象的でした。

特に、シーモン役を演じたシーモン・ルーフは、若き日のアンドリュー・マッカーシーを彷彿とさせる容姿で、アナーキストグループに感化されていく主人公の繊細さと危うさを、巧みに表現していたと思います。美しくも恐ろしい“若さの代償”が深く胸に刺さる作品です。

また、社会的な摩擦や若者の葛藤を情感豊かに映し出し、官能的とすら言える空気をたたえた映像美も心に残りました。

アナーキストグループの政治的な意見や、そのダイナミズムについては、ネタバレありの見どころ・考察で語っているのでチェックしてみてください。

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『偽りなき日々』の登場人物&キャスト

シーモン(シーモン・ルーフ)

野心を胸にロースクールに進学するが、大学生活に失望し、マックスと出会ったことで人生を踏み外してしまう。

マックス(ノア・リオス)

過激なアナーキスト。マックスを危険な世界に引きずり込んでいく。

シャールズ(ピーター・アンダーソン)

元政治学教授で、若者にアナーキズムを教えながら一緒に暮らしている。

ディナ(ナタリー・マーチャント)

マックスの姉でシーモンの元教え子。薬物に染まっている。

ロビン(ヴィリ・ラムネク・ペートリ

マックスの仲間でシャールズ邸で暮らしている。血の気が多い性格。

グスタフ(アルヴィド・フォン・ヘランド)

マックスの仲間でシャールズ邸で暮らしている。



『偽りなき日々』の全あらすじ(ネタバレあり)

 

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以下、物語の展開を時系列順にまとめました。
・ルンドで始まる新たな日々
・シャールズ邸での生活
・強盗に加担したシモーン
・決別と再出発

ルンドで始まる新たな日々

作家志望だったシーモンは、題材を見つけられないまま現実的な進路として法を選び、スウェーデンの街ルンドに到着する。だが街は抗議デモの真っ最中で、混乱を避けて裏道を歩いていた彼は、偶然にも宝石店を襲撃する強盗グループと遭遇する。警官が現れ、シーモンはとっさに強盗に警告するが、警官にペッパースプレーを浴びせられてしまう。強盗の一人が警官を襲って彼を助け、シーモンの目を水で洗ってくれた。

シーモンは裕福な弁護士ルドウィグのアパートに下宿するが、法律の勉強に身が入らず日々を持て余す。ある日、図書館で出会った女性マックスが、デモの日に彼を助けた人物だと分かり、次第に親しくなっていく。マックスの導きで彼女の仲間たちと関わるようになり、自由で刺激的な暮らしへと足を踏み入れていく。

シャールズ邸での生活

シーモンは、マックスに誘われて崖から飛び降りるという大胆な“通過儀礼”を経験し、シャールズという男の邸宅に連れて行かれる。そこには、元政治学教授でアナーキズムを教えるシャールズの思想に共鳴する若者たちが暮らしていた。

彼らの知的で自由な会話、まるで家族のような生活に魅了されたシーモンは、彼らの一員として迎えられ、次第に法の世界への疑問を深めていく。

美術館や高級時計店を訪れたシーモンは、仲間たちと行動を共にし、ついには指示されるままに店から時計を盗んでしまう。この窃盗をきっかけに、彼は完全に“こちら側”の世界に足を踏み入れる。

シャールズは「福祉国家の平等は幻想だ」と説き、マックスは「窃盗は資産の奪還」と言い切る。シーモンは、彼らの思想と行動の間にある正義の形に心を揺さぶられていく。

強盗に加担したシモーン

ルドヴィグのアパートで開かれた仮面パーティーで、シーモンはマックスがルドヴィグと関係を持つ現場を目撃して愕然とする。しかし彼女から、彼に近づいたのは、裕福な彼の家の鍵を手に入れるためだったと聞かされる。ルドヴィグの家への強盗計画が進行し、シャールズは反対するも、シーモンも加担して決行される。

しかし犯行中、偶然居合わせた家政婦ジョイスが撃たれてしまう。良心に突き動かされ、素顔をさらして応急処置を試みたシーモンだったが、仲間に無理やりその場から連れ去られてしまう。その後もマックスに脅されながらルドウィグの鍵をアパートに戻し、徐々に彼は仲間たちの目的や正義に疑念を抱き始める。

過去にグループを抜けたヘンリクという人物の存在を知り、その痕跡を追うシーモンは、彼が遺したメモから仲間たちの本名や背景を知る。再びシャールズ邸を訪ねた彼が目にしたのは、自ら命を絶ったシャールズの姿だった。

決別と再出発

突如、マックスから助けを求める連絡を受けたシーモンは、ストックホルムの高級ホテルへと向かう。マックスと再会して再び肌を重ねるが、それは新たな犯行の幕開けだった。狙われたのは、そのホテルに宿泊している富豪マリア・コンティ。犯行中にホテル従業員が撃たれる事態に発展し、シーモンは仲間と対立、混乱の中でグスタフが撃たれてしまう。

逃走後、シーモンはマックスに本名や過去を知っていると告げ、「何かあれば情報を公表する」と警告する。マックスは「あなたはただの駒じゃなかった」と涙を浮かべながら別れを告げる。

ラスト、シーモンは「言行一致。思想に従い行動せよ。さもなくば、日々は偽りだ」と自らに言い聞かせ、涙を流しながらもほのかに微笑みを浮かべて歩き出す。

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『偽りなき日々』の見どころ・考察(ネタバレあり)

 

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以下のポイントに注目して考察を深掘りしていきます。
政治哲学の影に潜む破滅の遊び
・“偽りなき日々”は、ここから始まる
・マックスはシーモンに恋していたのか?

政治哲学の影に潜む破滅の遊び

本作は、美しくも恐ろしい“若さの代償”を描くスウェーデン発の社会派スリラー。作家志望だった主人公シーモンは、「書く題材がない」ことを理由に法学を選んだ青年で、ルンドの街で偶然アナーキスト的な若者グループに出会い、その自由で知的な雰囲気に惹かれていきます。

政治哲学や階級への怒りを語る彼らの言葉は、現代社会の矛盾を突いているようにも響き、特にシャールズが語る「福祉国家の平等は幻想だ」という言葉は耳に残ります。

「教育や医療が整っていても、失敗した個人は切り捨てられ、特権階級の利益が守られるだけだ」という主張は、スウェーデン社会に潜む“見えにくい不平等”を浮き彫りにしています。

ですが、その思想と彼らの行動は伴わず、マックスは「窃盗は資産の奪還だ」と豪語し、富裕層を狙った強盗を繰り返しますが、その行為は結局のところ自己正当化に過ぎず、階級闘争の理想とはほど遠いものでした。

仲間のロビンやグスタフもジャンキーにしか見えず、実際にマックスの姉は薬物依存症です。彼らの犯罪は社会変革の手段ではなく、破滅的な若さの衝動として描かれていて、政治哲学をまとった危うい遊びのように感じられました。

映像美や緊張感ある演出は魅力的でしたが、アナーキストの若者像に説得力が欠け、彼らの行動が単なる自己破壊的な犯罪に見えてしまった点は残念でした。

社会的テーマや、階級差の摩擦を扱う作品としては刺激的ながらも、筆者としては星3つの評価に留まりました。



“偽りなき日々”は、ここから始まる

マックスたちと反対にシーモンに共感できるのは、彼から若さゆえの迷いや、どこにも居場所がないと感じる孤独感、そして何かに強く属したいという渇望を感じられるからだと思います。

自由で知的に見えるマックスたちの世界は、彼にとって退屈で息苦しい法学の授業とは真逆で、一瞬だけ本当の自分を見つけたような錯覚を与えてくれたのかもしれまん。ですが現実は残酷で、彼らの「革命ごっこ」は人を傷つけ、命さえ奪うものへと変わっていってしまいました。

物語の終盤、仲間や幻想との決別を決意したシーモンは、涙を流しながらも「思想に従い行動せよ、さもなくば日々は偽りだ」と自らに言い聞かせて歩き出します。その姿には、若き日の危うい選択を経て、ようやく自分自身の人生と向き合う覚悟が滲んでいたように思います。

だから涙を流しながらも、少し笑みのような表情を浮かべていたのではないでしょうか。シーモンが、「やっと書くネタが出来た」と思って笑っていたわけではないと祈るばかりです(笑)。

マックスはシーモンに恋していたのか?

本作を、“美しくも恐ろしい若さの代償”を描く青春映画として捉えたら、マックスがシーモンに本気で恋していたのか気になります。

シーモンが、彼女に本気で恋していたことは間違いないでしょう。彼女は初めて自由を感じさせてくれた存在であり、彼女の言葉や視線に完全に心を奪われていたからです。

ですが、対するマックスはどうでしょうか。彼女にとってシーモンは肌を重ねながらも、“便利な新人駒”だったように思えます。過去のヘンリクがまさに良い例で、彼は完全に「試運転済みの捨て駒」扱い。利用価値がなくなれば、彼の恋心などお構いなしにポイ捨てされてしまいました。

マックスは、愛情と計算を同時に操る、ある意味で天性のファムファタールだと言えるかもしれません。それほど美人ではないのに男が吸い寄せられてしまうのは、彼女が発する危険な香りのせいではないでしょうか。

ラストで彼女が別れる時に泣いていたので、シーモンに対して恋心がゼロだったとは言いませんが、彼女の中では常に「感情50%、計画50%」ぐらいのバランスで進行していたのは間違いないと思います。計画のために、シーモンがいる場所でルドヴィグと寝るぐらいですからね。

恋に落ちたシーモンだけが本気モードで、相手は半分ゲーム感覚……この温度差こそが、本作の切ないところではないかと思います。

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『偽りなき日々』のまとめ

本作は、「階級、裏切り、法の外で生きる魅力」というテーマを下敷きに、社会的な摩擦や若者の葛藤を情感豊かに映し出しています。

理想と現実が交差し、魅惑と危険が表裏一体となる作品として、心理サスペンスや社会派スリラーが好きな人にに特におすすめです。

『偽りなき日々』の視聴方法

『偽りなき日々』を視聴できるのはだけ! VODの中でもダントツにコンテンツ量が多いNetflix。使ったことがない方も、この機会にぜひ♪

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