Netflixドラマ『Mo/モー』は、パレスチナ難民のモーがテキサス州ヒューストンで家族を支えながら、不法移民として厳しい現実と向き合う姿をユーモアたっぷりに描くシリーズ。シーズン2では何が起こるのか、シーズン1のおさらいを交えながら、ネタバレあり・なしでダイブイン(考察)していきます!
『Mo/モー』シーズン2の概要
『Mo/モー』シーズン1をおさらい
『Mo/モー』は、スタンダップコメディアンのモー・アマーがクリエイター・主演・脚本・製作・監督を務めるシリーズ。クウェート生まれでパレスティナ移民の主人公モー・ナジャーは、主演モーの半自伝的なストーリーで、移民問題や移民の人々が抱えるアイデンティティの葛藤などシリアスなテーマを扱いながらも、スタンダップ出身ならではのモーのコメディセンスが抜群に冴え、筆者は毎度爆笑させられています(笑)。
シーズン1のあらすじ
モーは、故郷パレスチナから家族と一緒に米国に亡命して早22年。ビザは申請中だが一行に前進しないため、無国籍の彼はまともな仕事に就けないでいる。アスペルガー症候群の兄サミールと母親を支えながら、日々奮闘するモー。恋人マリアとの関係は安定しているが、彼女はビザのためにモーと結婚するつもりはない。
モーは、絶品のオリーブオイルを作る母親ユスラのために、土地を借りてオリーブオイルの木々を植えるが、何者かにごっそりと木を盗まれてしまう。犯人を突き止めたモーは、友人ニックと一緒に木を取り戻そうとするが犯人に見つかりそうになり、木を載せたトラックに隠れていると車が動き出し、なんということかメキシコまで連れて行かれてしまう。果たして無国籍の彼は、無事にアメリカへ戻れるのか……?
『Mo/モー』シーズン2のあらすじ(ネタバレなし)
あれからモーはメキシコに半年も足止め状態になり、かなりヤバイ方法でアメリカの国境を渡ろうとして、トラブルに見舞われてしまう。
なんとかアメリカへ戻ったモーだが、メキシコへ行ったことが理由で亡命申請に支障をきたし、他にもショックな出来事がモーを待ち受けていて泣きっ面にハチ状態に……。何もかもが上手くいかないなか、モーのアイデンティティの葛藤と祖国への想いへはますます深くなっていく……。
『Mo/モー』シーズン2の海外での評価&筆者の感想(ネタバレなし)
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シーズン2も、移民の苦悩や葛藤、祖国と在住国との間で揺れるアイデンティティなど、かなりシリアスで扱いにくいテーマを取り上げつつも、時にはタブーすれすれのジョークを投入して悲喜こもごもと描き、その絶妙なバランス感が神がかり的なレベルでした。
シーズン2では、人種差別や移民問題、イスラエルとパレスチナの対立といった深く考えさせられるシーンがある一方で、家族の絆や温かな触れ合いに心がジーンとしたり、モーのユーモアにも大爆笑させられました。これほど様々な感情を一つの番組で味わい、楽しむことができる作品は本当に貴重だと思います。
モーのパレスチナ人としてのアイデンティティや祖国への想いは、母親ユスラが作るオリーブオイルに上手く投影されているのもポイント。家族で始めたオリーブオイル・ビジネスと、オリーブ農園にまつわるストーリー展開もドラマチックかつ秀逸で、オリーブオイルという日常的でありながらも非常に象徴的な存在が、モーにとっての家族や祖国との繋がりを色濃く表現しています。モー役のモー(ややこしい)の脚本家、そしてストーリーテラーとしての才能に頭が上がらない思いになりました。
『Mo/モー』シーズン2のキャスト
『Mo/モー』シーズン2の全あらすじ(ネタバレ)
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モーは、メキシコで半年も足止めを食らっていた。何度も大使館に足を運び、オリーブの木カルテル(笑)に誘拐されたと説明するが、一向に受付を突破できない。それでも中東のコロッケ、ファラフェルを挟んだタコスの屋台や、「パレスチナのクマ」(笑)というステージネームでプロレスラーとしてリングに立ったり、何とか生計を立てていた。
ある日、ファラフェル・タコスの常連客が大使の妻だと判明し、彼女と仲良くなったモーは、大使の家で開かれるパーティーに招待される。しかし大使の妻に誘惑されるは、大使とはイスラエルとパレスチナの見解で口論になり、結局レセパセ(渡航文書)の発行は手伝ってもらえずじまい……。
密入国を試みるモー
最終的にモーは、タコス・スタンドの仲間に密入国のガイド「コヨーテ」を紹介してもらい、徒歩で国境越えを試みる。ところが、その途中で国境自警団に捕まり、ICE(移民・関税執行局)に身柄を引き渡されてしまう。ICEの収容所は劣悪な環境だったが、弁護士リジーの働きで米国への帰国が決まる。
モーがメキシコにいる間、母親と兄は亡命申請の許可が下り、オリーブ農場の運営とオイルの生産も軌道に乗り始めていた。これまで自分が家族の面倒を見ていたのに、自分がいなくても物事が順調に進んでいて、複雑な気持ちになるモー。しかも、半年連絡を取っていない間にマリアに新しい恋人が出来ていて、こともあろうか相手がユダヤ人だと知って大ショックを受ける。
モーが強制送還に…!
さらに亡命申請の審問で、モーはメキシコに行ったことを理由に、判事に強制送還を言い渡されてしまう。といっても、無国籍の彼には帰る国がないためアメリカには滞在できるが、ビザが下りた母親と兄が計画しているパレスチナへの帰郷にモーは同行できない。
しかも、モーはアンクルモニターの装着も命じられるが、悪いことばかりではない。強制送還になったのに労働許可が下りて、モーは自分の好きな仕事に就けるようになる。
マリアの新恋人と火花を散らすモー
ニックたちが開いたハウスパーティーに招待されたモーは、そこでマリアの新恋人ガイと初対面。ガイは、イスラエルのヒュージョン系レストランのオーナーシェフで、モーは成功している彼に引け目を感じてしまう。
そんななか、ニックがガイのレストランでテイクアウトした料理を目にし、モーは怒り心頭! というのも、以前にモーがガイに話をした自分のヒュージョンメニュー、ファレフェル・タコスのアイデアを盗んでいたからだ。怒りが収まらないモーはガイのレストランに押しかけ、二人は大口論に! まさにその瞬間、モーのアンクルモニターの電源が切れてピーピーと音が鳴り出し、怒りわめくアラブ人がテロリストだと思い込んだ客が、爆弾が爆発すると勘違いして大騒ぎに!(←このモーの自虐が炸裂したユーモアに筆者は大大爆笑)
さらに悪いことに、その様子を捉えた動画がSNSで炎上し、モーと母親が進めていたオリーブオイル・ビジネスの話がオジャンになってしまう。
ついにパレスティナへ帰郷
相変わらずトラブル続きのモーだが、感謝祭の集まりで家族と友人たちと深い絆を確かめ合い、しかもガイと別れたマリアがビザのためにモーと結婚すると言ってくれ、二人は偽造結婚カップルとなる。
こうして10ヶ月後、モーは母親と兄とパレスチナに帰郷し、何年も会えずにいた家族や親戚と感動の再会を果たす。しかし、イスラエルと戦争真っ只中のパレスチナの地で、目にした出来事の数々に心を痛めるモー。亡き父親の思い出に浸りながら、一家はそれぞれの想いを胸にアメリカへの帰路につく。
『Mo/モー』シーズン2の見どころ・考察(ネタバレあり
最高の仕事をしてくれたアンクルモニター
シーズン2でも、モー・アマーのユーモアのセンスがキレッキレで、特にスピーカーを搭載したアンクルモニター(←そんなのあるのか!?)がメチャクチャいい仕事をしてくれました(笑)。
新恋人が出来たマリアと友達にもなれないでいたモーが、二人で久しぶりにしっかりと話合いが出来た時に、アンクルモニターのスピーカーから監視官が割り込んできたり、モーのマリアに対する発言にケチをつけたりとか、アンクルモニター絡みのシーンが超笑えました。
そして何と言っても、アンクルモニターの電源が切れかけてピーピーと音を出し始め、モーをテロリストだと勘違したレストラン客が、爆弾が爆発すると思って大騒ぎになるシーンに大大爆笑! 久しぶりにドラマを観て、声を出して笑ってしまいました(笑)。
この自虐ギャグは、アラブ系のモーだからこそ書ける展開であって、笑えるシーンでありがならも、すぐに人を見た目でステレオタイプ化してしまう人たちに対する痛烈な皮肉が込められています。こういうタブーすれすれのジョークやユーモアを、上手くストーリーに絡めた脚本が本当に秀逸だと思いました。
モーが様々な問題に深く切り込むシーズン2
シーズン2では、メキシコからアメリカに密入国しようとしたモーが、ICEの収容所で受けた酷い扱いも忘れてはいけません。トランプ大統領が一期目に実施した移民対策で、ICEが不法滞在者(主に南米出身)の親と子どもバラバラに引き離して論争を呼び、収容所の劣悪な環境も大きな問題となっていました。モーはパレスチナ系アメリカ人ですが、他の移民問題にもしっかり光を当てることも忘れていません。
そしてシーズン2は、やはりイスラエルとパレスチナの戦争中に製作されたからか、シーズン2よりも両国の問題に触れるシーンが多かったのが印象的でした。両国の争いについては根が深く、政治問題を語る記事ではないため割愛しますが、平和を望まない人なんていないはず……。一刻も早く戦争が終わり、両国に平和が訪れることを祈るばかりです。
『Mo/モー』シーズン2のまとめ
思えば、『Mo/モー』のような番組は、10年前ならまず製作されなかったでしょう。ここ数年で、ようやくハリウッドで多様性を重視する動きが見られるようになり、移民やLGBTQ+といった人々のフィルターを通した物語が描かれようになりました。これからも、こういった番組を応援していきたいと思います。
様々な問題や感動を爆笑で包み込んでくれる『Mo/モー』を、ぜひNetflixでチェックしてみてくださいね♪

