Amazonドラマ『ベター・シスター』は、人気メディアを率いるクロエ・テイラーの夫が殺害され、息子が容疑者として逮捕されたことで、一家の秘密が暴かれていく……というストーリー。家族の確執と絆に切り込んだ本シリーズで何が起こるのか、キャスト紹介やあらすじを交えながら、ネタバレあり・なしでダイブイン（考察）してきます！
【本記事の注目点】
・ネタバレを踏みたくない方へ
前半ではネタバレなしのあらすじ＆海外評価・筆者の感想を紹介しますので、安心して作品を視聴すべきかどうか判断してみてください。
・ネタバレありで深掘りしたい方へ
後半ではネタバレありの全あらすじ＆見どころ・考察で掘り下げ、作品の魅力を余すことなくお届け！ すでに視聴済みの方も、おさらいとしてお楽しみください♪
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『ベター・シスター』の概要
『ベター・シスター』のあらすじ（ネタバレなし）
人気雑誌「リアル・シング」の編集長クロエ・テイラーは、政界入りを噂されるほど社会的に影響力を持つ人物。しかし、弁護士の夫アダムがハンプトンの別荘で刺殺され、息子イーサンが第一容疑者として逮捕されたことで一大スキャンダルとなる。
クロエはイーサンの育ての母親で、実母はアダムの元妻であり、クロエの姉でもあるニッキー・マッキントッシュ。クロエは、実の姉の元夫と結婚したのだ。イーサンの法定後見人であるニッキーがハンプトンに到着し、複雑な関係性にある姉妹が一緒に過ごすことを余儀なくされ、起訴されたイーサンを支えることになる。
数々の証拠によりイーサンは窮地に追い込まれるが、物語が進むにつれて他の容疑者も浮上し、クロエとニッキーの秘密も明らかになっていく。
アダムを殺した犯人は本当にイーサンなのか!? そして、姉妹に隠された秘密とは……？ 緻密なストーリーと姉妹の複雑な関係が絡み合い、事件は思わぬ方向へなだれ込んでいく──。
『ベター・シスター』海外での評価＆筆者の感想（ネタバレなし）
『ベター・シスター』は、社会的ステータスのあるクロエ・テイラーが夫の惨殺死体を発見するという、殺人ミステリーでよくある展開でスタートします。
もちろん殺人ミステリーとして、「アダムを殺したのは誰なのか!?」という謎解きも見どころとなりますが、本作の核心は複雑な関係にある姉妹が生み出すダイナミズムです。
クロエはイーサンの育ての親ですが、彼の実母はクロエの実の姉であり、アダムの妻だったニッキー。つまり、クロエは姉の元夫と恋に落ちて結婚し、姉から息子の親権を奪った形になります。
普通の感覚からすると倫理的に問題ありな姉妹が、殺人容疑をかけられた息子を一緒に支えなければならない……。これ以上、ややこしい状況が他にあるでしょうか？ 表面上は再会を機に協力し合っているように見えるものの、会話の端々に滲むトーンが緊張感を生み出し、筆者は姉妹が繰り広げる愛憎劇にジワジワと引き込まれていきました。
ただ、全8話構成で1話が1時間前後と長いため、冗長に感じる箇所があって、犯罪サスペンスとしては少しテンポの速さが足りないかもしれません。ダークな家族ドラマやヒューマンドラマとしては、じっくりと楽しめる作品ですが、犯人が判明した後に思わずツッコミたくなる疑問がいくつか浮かんでしまい、そこはネタバレありの見どころ・考察で掘り下げているのでチェックしてみてください。
『ベター・シスター』は、5人姉妹が殺人事件に巻き込まれるApple TV+ドラマ『バッド・シスターズ』や、姉妹の愛憎劇が描かれるNetflixドラマ『セイレーンの誘惑』などが好きな人におすすめしたいシリーズです！
・『セイレーンの誘惑』を考察した記事をチェック♪
『ベター・シスター』の登場人物＆キャスト
クロエ・テイラー（ジェシカ・ビール）
人気メディア「リアル・シング」の編集長で、政界入りも噂されている実力者。クロエの妹でイーサンの義母。
ニッキー・マッキントッシュ（エリザベス・バンクス）
クロエの姉でイーサンの実母。アルコール依存症と闘っている。
アダム・マッキントッシュ（コーリー・ストール）
ニッキ―の元夫でクロエの現夫。イーサンの実父で弁護士。
ナンシー・ギドリー（キム・ディケンス）
アダムの殺人事件を捜査する刑事で、粗野な性格。
マット・ボーエン（ボビー・ナデリ）
ギドリーの相棒の刑事で冷静なタイプ。
キャサリン・ランカスター（ロレイン（ロレイン・トゥーサント）
クロエの親友で、メンター的な存在でもあるセレブ。
ビル・ブラドック（マシュー・モディーン）
アダムが働く弁護士事務所の上司。アダムにジェントリー・グループの仕事を任せる。
ジェイク・ロドリゲス（ガブリエル・スローヤー）
アダムの同僚で、ジェントリー・グループの仕事を一緒に担当している。
ミッシェル・サンダース（グロリア・ルーベン）
イーサンの訴訟を担当する弁護士でジェイクの友人。
『ベター・シスター』の全あらすじ（ネタバレあり）
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・惨殺された夫
・息子の逮捕と姉との再会
・FBIに協力するクロエ
・父と息子の複雑な関係
・クロエの告白
・明らかになった過去の真実
・告発の果てに残された姉妹の絆
惨殺された夫
人気雑誌「リアル・シング」の編集長クロエ・テイラーは女性のエンパワーメントを推進し、政界入りを噂されるほど社会的に影響力を持つ人物。その一方で特に男性から敵視され、SNSでの誹謗中傷が絶えない。
ある夜、クロエは仕事関係のパーティーに出席したが、夫アダムが姿を見せなかった。アダムと連絡がつかないまま自宅に戻ると、そこには血まみれで倒れた夫の姿が。すでに息はなく、傍らには凶器とみられるポケットナイフが落ちていた。思わずそれを手にしたクロエは、混乱したまま外へ飛び出してしまう。
イーサンの法定後見人として、実母の二コール・マッキントッシュがニューヨークに来ることになる。ニッキーはクロエの実の姉で、アダムの元妻。アルコール依存症のニッキーは、2歳だったイーサンをプールで遊ばせている時に泥酔し、息子を溺死させるところだったのだ。クロエは、イーサンを世話するうちにアダムと恋に落ちて結婚。アダムとクロエは、ニッキーを完全に人生から切り捨てていた。
息子の逮捕と姉との再会
殺人現場は強盗の仕業に見えたが、窓は内側から割られていて偽装であることは明白だった。そして検死の結果、アダムの爪からイーサンのDNAが発見され、さらに事件の夜のアリバイが嘘だったことが判明し、イーサンは逮捕されてしまう。しかも、イーサンは銃を学校に隠し持って行った過去があり、クロエの力で問題を揉み消していたことも明らかになる。
クロエは、事件の2日前にアダムが仕事関連で不審な動きをしていたことを知り、アダムの弁護士事務所の上司ビル・ブラドッグに、夫が取引していたジェントリー・グループについて調べてほしいと頼む。
オハイオからニッキーが到着するが、クロエとの関係は常に緊張感が漂い、二人は事あるごと激しい喧嘩をしてしまう。しかしイーサンを支えるために、二人は協力し合うべきだと話し合う。
初公判でイーサンは保釈が認められず、ハンプトンの刑務所に拘留され続けることになってしまう。
ニッキーは、クロエの車のダッシュボードに、血の付いたポケットナイフが入っているのを発見して驚く。それは子ども時代、父親から渡されてニッキーとクロエが使っていた物だった。ナイフを持ち出したニッキーは消毒し、見つからないように隠す。
FBIに協力するクロエ
クロエはアダムの同僚ジェイク・ロドリゲスの家へ行き、二人が不倫関係にあることが明らかになる。クロエは彼が外出している隙にスマホを盗み見て、ビルとジェイクのやり取りで、アダムがジェントリー・グループについて何か情報を握っていないか探っていることを知る。
さらに、アダムの車の中でFBI捜査官エドワード・オリヴェーロの名刺を見つけ、夫が殺された事件と関係があるのではないかと思い、連絡を取る。
オリヴェーロ捜査官は、アダムが握っていたジェントリー・グループの情報を渡せば、対価を返すと約束。クロエはイーサンの無実を証明する助けになると思い、協力すると答える。
父と息子の複雑な関係
裁判が始まり、クロエを中傷するSNSのスレッドに度々コメントを書き込んでいたユーザーの一人が、イーサンだと判明する。そこには、アダムに対する殺意を示唆するイーサンのコメントが書かれていたうえ、証言台に立ったイーサンは「父親に消えて欲しかった」と証言してしまう。
一方のアダムは、野心がなく、意味もない物に大金を使う息子に不満を抱いていて、父と息子の関係が良くなかったことがフラッシュバックで明らかになる。
クロエはアダムの弁護士事務所のオフィスに行き、遺品を片付ける振りをしてジェントリー・グループのファイルをコピーする。そのファイルをFBI捜査官に渡すが、オリヴェーロはイーサンのために裁判で証言する気など毛頭なく、逆に脅されてしまう。
クロエの告白
裁判で証言台に立ったクロエは、ここ1年ほど、仕事のストレスが溜まっていたアダムに暴力を受けていたことを告白し、その事実を打ち明けていたのは不倫相手のジェイクだけだと証言する。続けて証言台に立たされたジェイクは、次々に自分に都合の悪い質問を投げかけられたため黙秘権を行使し、ジェイクを第二の容疑者に仕立て上げたことが功を奏し、イーサンは無実となる。
自宅に戻ったイーサンはクロエに、事件の前にアダムから暴力を振るわれたクロエが、「今度触れたら殺してやる！」と叫んでいた現場を目撃していたため、クロエが犯人だと思い、殺人現場を強盗の仕業に見せかけるために部屋を荒らしたと打ち明ける。イーサンが学校に銃を持って行ったのは、自宅に銃があると、両親が銃で命を落とす可能性があると不安になったからだった。
明らかになった過去の真実
イーサンは事件が起こる前、子ども時代にプールで溺死しかけた事件について状況を知りたいと思い、警察からファイルを取り寄せていた。資料には、イーサンの肺に水は検出されず、溺れた形跡はないと記されていた。アダムが、アルコール依存症のニッキーから息子を守るために、ニッキーのドリンクに睡眠薬と抗うつ剤を混ぜて酩酊させ、事故をデッチ上げたのだった。
その真実を知り、クロエは姉を人生から切り捨て、息子を奪ってしまったことに激しく動揺する。しかし、なんとニッキーは、その真実を2年前に知っていたのだというのだ。
その時は、クロエたちと暮らす方が息子のためになると折り合いをつけたが、事件の前に、アダムがクロエに暴力を振るっているとイーサンから報告され、アダムに会いに行ったと打ち明ける。そして、プールの件で言い争いになり、アダムに襲われて抵抗した際、ナイフで刺してしまったのだった。
告発の果てに残された姉妹の絆
その翌日、クロエを訪れたジェイクがFBI捜査官から脅されていると言い、ジェントリー・グループの実態を打ち明ける。ジェントリーは、コストを抑えるために人身売買で人を次々に雇い、スタジアムを短期間で建設している悪徳企業で、ビルはジェントリーの法人化を手伝ったというのだ。
クロエは、アダムの自宅のオフィスの金庫に隠しスペースを見つけ、そこには彼が調査していた情報がまとめてあった。ビルの自宅を訪れたクロエは問題のファイルを渡し、その時にこっそり凶器のナイフを仕込んでいた。
アダムを殺した人物を追っていたギドリー刑事は、ニッキーが犯人だという証拠を掴んでいた。しかし先回りしたニッキーが、ギドリーが過去に隠蔽した不祥事をメディアにリークし、ギドリ―は上司から休職を命じられたうえ、ニッキーに関する証拠も無視されてしまう。そして、ビルがアダムの殺人容疑とジェントリー・グループの件で警察に逮捕され、ビーチでジェイクの遺体が発見された。
ラストは姉妹が一緒に焚火に当たりながら、クロエが「あなたのいない人生なんて意味がない」と言い、その言葉にニッキーが「何から始める？」と答え、これから二人が人生を共にすることが示唆されて幕を閉じる。
・筆者が夢中になって視聴したオススめ犯罪サスペンス！
『ベター・シスター』の見どころ・考察（ネタバレあり）
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・姉妹の“母性”が問いかけるもの
・“ベター・シスター”の意味は？
・視聴後に浮かんだ疑問
姉妹の“母性”が問いかけるもの
『ベター・シスター』は、犯罪と陰謀が交錯するサスペンスという枠を大きく超えた、姉妹の複雑な絆と再生の物語を描いたシリーズです。
編集長として華々しいキャリアを築き、女性エンパワーメントを推進するクロエ・テイラーと、アルコール依存症で息子の親権も失い、ひっそりと生きる姉ニッキー・マッキントッシュ。
生みの母親であるニッキーと育ての母親であるクロエは、どちらもイーサンにとって間違いなく母親ですが、これまで二人が果たしてきた責任や役割は大きく異なり、物語におけるドラマ性の大きなポイントとなっています。
ニッキーは深刻なアルコール依存症で、2歳のイーサンをプールで溺れさせかけた過去を持ち、「母親失格」の烙印を押されてしまいました。そのせいで息子と完全に引き離され、人生の主導権を失ったままオハイオで静かに暮らすことになります。
ところが物語の終盤で、イーサンが溺れかけた事故はアダムの偽装だったことが判明します。それでも彼女は、クロエたちの元で育った方がイーサンにとって幸せだと判断し、自ら身を引きました。この選択は「育児の責任を放棄した」のではなく、「母性ゆえの愛」だったと考えられます。
一方、セレブでキャリアウーマンのクロエは責任感も強く、我が子のようにイーサンを育ててきました。表面的には完璧な母親に見えるし、彼女の元でイーサンは良い教育を受け、何不自由ない生活を送っていました。
ですが、それと同時に息子の問題行動を権力で揉み消し、女性のエンパワーメントを謳いながらも夫のDVに苦しみ、そのことを打ち明けられずにいました。クロエは、“理想の母親”の仮面に閉じ込められていたとも言えそうです。上辺だけ完璧を装った家庭環境は、イーサンにとって健全だとは思えません。
劇中では、姉妹が「どちらが母親として、より愛情が強いか」を競うような場面がありました。クロエとニッキーという全く正反対のタイプの母親を前に、「産んだから母なのか？」、「育てたから母なのか？」、「愛したから母なのか？」と問いかけられても、誰も簡単には答えることは出来ないでしょう。
「どちらが、より優れた母親か」と結論づけることが出来ないからこそ、ラストで二人が焚き火を前にし、「何から始める？」と未来を語る場面が印象的でした。
“ベター・シスター”の意味は？
「ベター(Better）」は比較級で「より優れた」という意味ですが、『ベター・シスター』というタイトルは、ニッキーとクロエのどちらが「より良い姉か？」という問いかけではないと思います。
表向きには、クロエはキャリア志向で大きな成功を収めている、しっかり者の妹。対するニッキーは、昔から問題児でダメな姉。この構図だけを見ると、誰もが“ベター”なのはクロエだと思ってしまうはず。ですが物語が進むにつれて、そのイメージが少しずつ崩れていきます。
「ベター」という言葉は、誰の視点で見るかによって大きく変わるように思います。クロエは、「自分はニッキーよりもマシな人間、マシな母親」だと信じていて、対するニッキーは、「自分から息子と夫を奪った妹は、私よりも幸せ」だと思ってきた──。そんな二人が事件をきっかけに、それぞれ自分の過ちや弱さと向き合い、相手を理解しようとし始めました。
「ベター・シスター」とは過去の比較ではなく、これから二人がどのように関係を築いていくかで決まる、姉妹の将来のあるべき姿ではないかと思いました。
視聴後に浮かんだ疑問
ネタバレなしの感想では、「犯人が判明した後に、思わずツッコミたくなる疑問がいくつか浮かんでしまった」と書きましたが、それは、クロエが殺人現場で、子ども時代にニッキーと一緒に使っていたポケットナイフを見つけたのに、なぜ姉が犯人だと疑わなかったのか？という点です。
警察の調べにより、スマホの位置情報でニッキーのアリバイが証明されたとはいえ、クロエが姉を少しも疑っていなかったことが不思議でした。
それから、アダムを殺した犯人がニッキーだと明らかになった時、息子が逮捕されたにもかかわらず、なぜ彼女は自首しなかったのかという疑問が残りました。
劇中では、「私がやったと言う！」と主張するニッキーを、クロエが「そんなことをしたら余計状況が悪くなる」とたしなめる場面がありましたが、実際に犯人はニッキーだったわけです。
もし真実を打ち明けれていれば、すぐにイーサンを救うことが出来たはず。それなのに、なぜ彼女は黙っていたのでしょうか!? 「ニッキーには、自白するほど息子に対する愛がなかったのだろうか……？」とツッコミたくなり、観終わった後もしばらくモヤモヤが収まりませんでした。
・北欧ノワールや秀作サスペンスが好きな人にイチオシ！
『ベター・シスター』のまとめ
『ベター・シスターズ』は、所々にツッコミどころがあって犯罪サスペンスとしては及第点ながら、姉妹の愛憎劇と再生を描いた人間ドラマとしては引き込まれるシリーズ。
クロエ役のジェシカ・ビールとニッキー役のエリザベス・バンクスの演技合戦も見応えがあるので、ぜひAmazonプライムビデオでチェックしてみてください♪
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