Netflixドラマ『BEAST -私のなかの獣-』は、著名作家が怪しい不動産王の過去を探り始め、追い詰めていく心理サスペンス。本作で何が起こるのか、キャストやあらすじの紹介に加え、ネタバレなしの感想とネタバレありの考察でダイブインしていきます!
◉ネタバレなしで知りたい方へ
前半ではあらすじ・海外評価・筆者の感想を紹介。視聴前の参考にどうぞ。
◉ネタバレありで深掘りしたい方へ
後半では全あらすじと見どころ・考察をたっぷり紹介。視聴済みの方もおさらいに◎
※目次から各セクションにジャンプできます。
『BEAST -私のなかの獣-』の概要
基本情報を押さえておきましょう♪
『BEAST -私のなかの獣-』のあらすじ(ネタバレなし)
『BEAST -私のなかの獣-』の主人公は、著名な作家アギー・ウィッグス。彼女は幼い息子を亡くした悲劇が起きて以来、公の場から姿を消して筆を執ることもできず、過去の自分の影のような存在になっていた。
そんななか、隣の家をナイル・ジャーヴィスという有名で強烈な性格の不動産王が購入したことから、彼女の人生は再び動き始める。彼はかつて、妻の失踪事件の最有力容疑者だった男だ。
恐怖と興味の入り混じった感情を抱きながら、アギーは彼を新作の題材にしようと考え、真実を突き止めようと執念深く追い始める。だが、それは彼の“悪魔”を追いながら、自身の“闇”から逃げる行為でもあった。
やがて、二人の間で繰り広げられる“いたちごっこ”は、命がけの危険な駆け引きへと発展していく──。
・サスペンスが好きなら要チェック!
『BEAST -私のなかの獣-』の予告編を紹介
『BEAST -私のなかの獣-』は、アギー役のクレア・デインズが主演したスパイドラマ『HOMELAND』の製作チームが手がけるシリーズ。
予告編は、「ここで何してるんだ?」とナイルに尋ねられたアギーが、「彼女を殺したの?」と問い詰める緊迫感あふれるシーンでスタートします。
しかし彼は、「妻を殺していない」と無実を主張し、アギーに「君に賭けてみるよ。俺を失望させないでくれ」と静かに挑発。アギーが調査を進めるうちに二人の関係が微妙に近づいて緊迫が高まり、アギーは彼に「君は血に飢えてるな。その匂いが分かる」と言われ、まるで彼と同類のように扱われてしまいます。
アギーの周りの人たちは「彼は私たちとは違う」と警告し、「自分を顧みるよりも殺人を作り出したいんでしょ」と心配し、アギー自身が「私は怪物じゃないわ」とつぶやくシーンも。真実を追う中で、自身の心の闇とナイルへの執着に苦悩する姿を見せています。
『HOMELAND』のチームが手がけているだけあって、予告編だけでも映像から漂ってくる狂気と緊迫感がハンパなく、スリリングな心理サスペンスを堪能できそうな予感です!
『BEAST -私のなかの獣-』海外での評価&筆者の感想(ネタバレなし)
とにかく本作は、アギー役のクレア・デインズとナイル役のマシュー・リスの演技合戦にド肝を抜かれました! 二人の演技は超インテンスなのに、次第に奇妙な絆と連帯感で結ばれていく関係性がユニークで、どんどん引き込まれます。
ナイルと同性愛者のアギーの間には性的な引力が働かないため、人間の本質的なところで結びつき、また反発し合っているという点に説得力があり、そこが面白いポイントです。
スリラーとしても文句なしで、“隣人”“疑惑”“心理戦”といった定番要素を、洗練された演出とスタイリッシュな映像で昇華させています。本作は、クレアが主演した傑作スパイドラマ『HOMELAND』の製作チームが手がけた再タッグ作となり、黄金コンビが生み出すマジックに完全に虜になってしまいました。
さらに、“喪失の痛み”や“他者への疑念”“真実と虚構の境界”が巧みに絡み合い、ただの謎解き以上の深みがあり、手に汗握る心理戦にハラハラドキドキが止まらず、心に残るスリラー体験でした。
激しい心理戦が展開されるスリラーが好きな人は、絶対見逃し厳禁の傑作です!
・13歳の少年が起こした衝撃的な事件を描く!
◉スクロールに疲れた方へ
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『BEAST -私のなかの獣-』の登場人物&キャスト
◉アギー・ウィッグス(クレア・デインズ)
著名な作家。幼い息子を亡くして以来、筆を取れずに公の場から身を引いているが、隣人のナイル・シェルドンに関する謎を追うことで再び創作意欲を取り戻す。
◉ナイル・ジャーヴィス(リス・エヴァンス)
成功した不動産王で、妻の失踪事件でかつて有力な容疑者と目されていた男。冷静で謎めいた人物で何か秘密を抱えている。
◉ニーナ・ジャーヴィス(ブリタニー・スノウ)
ナイルの2番目の妻で画廊を経営している。
◉ブライアン・アボット(デヴィッド・ライオンズ)
FBI捜査官で、執拗にナイルを捜査している。
◉エリカ・ブレトン捜査官(ヘティエンヌ・パーク)
FBI捜査官でアボットの同僚。
◉マーティン・ジャーヴィス(ジョナサン・バンクス)
ナイルの父。問題ばかり起こす息子に幻滅しながらも、かばい続けている。
◉リック・ジャーヴィス(ティム・ギニー)
マーティンの弟でナイルの叔父。ナイルの家の敷地に暮らし、甥を監視している。
『BEAST -私のなかの獣-』の全あらすじ(ネタバレあり)
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◉疑念と好奇心が交錯する隣人関係
◉FBIと連携した危険な計画
◉ナイルの策略と追い詰められたアギー
◉真相の露呈とナイル一族の崩壊
疑念と好奇心が交錯する隣人関係
◉ アギーの隣家に、妻の失踪で疑惑を持たれいている不動産王ナイルが引っ越してくる
◉ アギーはナイルへの疑惑を深めつつ、新しい本の題材にしようと調査を開始
◉ FBI捜査官の警告やナイルの家族の介入が、アギーの行動に影響を与える
ベストセラー作家のアギー・ウィッグスは、4年前に交通事故で息子クーパーを失い、悲しみを胸に日々を送っていた。そんななか隣家に、失踪した妻マディソンを殺したのではないかと疑われている、不動産王ナイル・ジャーヴィスが引っ越してくる。
アギーは初対面からナイルと衝突するが、次第に打ち解け始め、交通事故の原因となった青年テディへの復讐心を明かす。その時に偶然テディが姿を見せ、ナイルは彼を不穏な眼差しで見つめていた。その翌日にテディが、ナイルの元妻マディソンと同じように遺書を残して失踪したため、アギーは両事件にナイルが関係しているのではないかと疑惑を深める。
そこへ、ナイルを執拗に追うFBI捜査官のブライアン・アボットが現れ、「ナイルには近づくな」とアギーに警告する。
ナイルに焦点を当てた、新しい本の構想を進め始めたアギーはアボットを探し出して連絡を取り、二人でナイルについて調べ始める。アギーは、「本の題材にしたい」とナイル本人に提案し、彼は検討の末に承諾する。
その頃、ナイルの叔父リックがアギーの自宅に侵入し、アボットの名前が書かれたメモを発見。アギーがナイルについて嗅ぎ回っていることを知られてしまう。
FBIと連携した危険な計画
◉ アギーはナイルの過去や家族を取材し、アボットと協力して証拠収集を計画
◉ アボットがナイル宅に侵入してデータを手に入れ、テディがナイルに囚われていることを発見
◉ アボットはナイルを尾行するが反撃され、殺されてしまう
アギーはナイルとのインタビューで彼の家族や過去を掘り下げ、FBI捜査官アボットと協力しながら、ナイルが身に着けている指輪の健康データを入手して、彼がテディを殺した証拠を掴む計画を立てる。
二人の繋がりを知ったナイルは、彼女にアボットとの関係について詰め寄るが、アギーは本の取材対象として会っているだけだと釈明。なんとかナイルとの関係を維持する。
ナイルが家族のパーティーに出席している隙に、アボットは彼の自宅に侵入してパソコンのデータを盗む。
アギーはナイルの失踪した妻マディソンの両親と面会し、彼女の自殺未遂や双極性障害の過去を知り、最初の自殺未遂で残した遺書を渡される。アギーは、両親がナイルを疑っていないことに驚き、彼に対する疑いが揺らぎ始める。
アボットはIT専門家にデータを解析してもらい、テディがナイルに囚われていて生きていることを発見。アボットはナイルを尾行し、テディの居場所を聞き出そうとするが、反撃されて殺されてしまう。
ナイルの策略と追い詰められたアギー
◉ アギーとナイルは取材を通じて距離を縮め、彼女を巧みに操る
◉ ナイルはアボットの遺体を廃車場で粉砕して証拠を隠滅
◉ アギーはマディソンの遺品から重要な手掛かりを発見し、ナイルの正体に迫る
◉ しかしナイルの策略でテディが殺され、アギーに罪が着せられる
取材を重ねるうちにアギーとナイルは心を通わせるようになり、ナイルはアボットの依存症を話題にして、「彼は信用できない」とアギーを巧みに操る。
ナイルは、アボットの遺体をトランクに入れた車を廃車場へ持って行き、粉砕して証拠を隠滅する。一方アギーは、マディソンの弟クリスからマディソンの遺品を託され、その中に遺書の破り目と完全に一致する破れたページをノートに発見する。
アギーがアボットの携帯に「彼はマディソンを殺した。証拠がある」と送信すると、その電話を手にしていたナイルがアボットに成りすまし、「そのことを誰にも言うな」と返信する。
アギーはアボットから連絡が途絶えたことを心配し、彼のアパートに侵入。そこへ、同じく彼を心配したFBIの同僚で愛人のエリカ・ブレトン
が現れ、アボットが入手したナイルのデータが入ったUSBを発見。彼がテディを監禁していることを知る。
しかし、アギーが自宅に戻るとナイルから電話があり、二階の様子を観に行くように示唆。アギーが部屋に入ると、なんとテディが殺されていた。ナイルがアギーに罪を着せたのだ。
真相の露呈とナイル一族の崩壊
◉ ナイルの過去の犯罪と家族の隠蔽工作がフラッシュバックで明らかになる
◉ アギーはテディ殺害の容疑にされて逃亡し、助けを求めるも孤立
◉ ニーナがナイルの自白を録音し、記者会見でFBIがナイルを逮捕
◉ 事件後、アギーは真実を綴った本を出版し、物語は“次世代への願い”で締めくくられる
フラッシュバックで2019年12月に遡り、ジャーヴィス親子が進めている複合施設「ジャーヴィス・ヤード」の出資者がFBIに逮捕される事件が発生。その出来事により、ナイルの父マーティンは息子を守るため、FBI内部の協力者を使い、アボットの捜査を阻止する計画を立てる。
一方、FBIの協力していたのはマディソンだと明らかになり、それを知ったナイルはマディソンを追い詰め、暴行を加えた末に殺してしまう。ナイルは父と叔父に助けを求め、彼女の遺体はジャーヴィス・ヤードの建設地に埋められた。
ナイルのせいでテディ殺害の容疑者になったアギーは逃亡を余儀なくされ、ナイルがテディを監禁していたことを唯一知っているエリカに電話をして助けを求める。しかし、エリカはリックに脅され、アギーの救助から手を引かざるを得なくなる。
手だてを失ったアギーはニーナの画廊を訪れ、テディとマディソンを殺したのはナイルだと告げ、警察に自首する。
ナイルの暴力性と嘘に気づきつつあったニーナはナイルを問い詰め、テディとマディソンの殺害を認めた夫の自白を録音。ナイルが、父と一緒に丸め込んだベニテス議員と、ジャーヴィス・ヤードの新計画を発表する記者会見の場でFBIに逮捕される。三重の終身刑を受けたナイルは、刑務所でリックの仲間に殺される。
アギーは『私のなかの獣』を出版。本の中で、息子の事故はテディだけでなく、自分にも過失があったことを認める。
物語は、ニーナがナイルとの間にもうけた息子を抱き、次世代に同じ運命が繰り返されないことを願う場面で幕を閉じる。
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『BEAST -私のなかの獣-』の見どころ・考察(ネタバレあり)

出展元:https://www.netflix.com
◉心の痛みと真実と虚構の境
◉アギーが直面した“真実”と内なる獣
◉パズルが揃う快感──見事な伏線回収の妙
心の痛みと真実と虚構の境
『BEAST -私のなかの獣-』は、“喪失の痛み”と“真実と虚構の境界”が複雑に絡み合う作品です。まず、アギーが背負う喪失は物語の核であり、息子クーパーの事故死が彼女の人生を完全に変えてしまいます。
喪失の痛みは時間とともに薄れるどころか、むしろ真実を曇らせ、彼女は「テディに責任がある」という“自分が信じたい物語”にすがることで、自分を守ろうとしてしまいます。この“喪失が生む虚構”こそが、本作の重要なテーマではないかと思いました。
もし、アギーが痛みで心を曇らせることなく息子の死を受け入れていたら、テディを追い詰めることもなく、彼がナイルの標的になることもなかったのではないでしょうか。
“自分が信じたい物語”については、夫ナイルの本質に薄々と勘づいていながら、目を背けていたニーナにも言えることではないでしょうか。しかし最後に、妊娠という、精神的にも身体的にも大きな変化を強いられるなかで、ニーナが夫の自白を録音してFBIに突き出した勇気が印象的でした。
人は喪失や恐怖に向き合う時、どこまでが真実で、どこからが自分を守るための嘘なのかを曖昧にする生き物なのかもしれません。その曖昧な境界を掘り下げた点が、本作の深さだと感じました。
アギーが直面した“真実”と内なる獣
本作で、最も大きな変化を遂げるのはアギーです。彼女は長年、息子の死をテディのせいにし続けてきました。もちろん、彼にも問題はあったようですが、アギーは「自分は悪くない」という物語にしがみつかないと前に進めなかったのでしょう。
しかし、ナイルの罠によって追い詰められていく中で、彼女は避け続けてきた真実──“あの日にハンドルを握っていたのは自分だった”という事実と──ついに向き合うことになります。
この認識の変化は、ナイルと出会ったことで、「自分の中にも獣がいる」ということをアギーが悟ったからではないでしょうか。彼女は被害者の立場に固執することから解放され、事故の過失は自分にもあったこと、テディに対する嫌がらせの数々を正当化することをやめた時に、自分が加害者だったことに気づいて認めたからではないかと思います。
また、アギーとニーナとの関係性も興味深いと思いました。お互いに“ナイルに傷つけられた女性”として心が通う瞬間が描かれ、ニーナは長年目を背けてきたナイルの暴力性と対峙し、アギーは自分の過ちと向き合います。
二人は異なる痛みを抱えながらも、最終的に“真実を見る女性たち”へと変わっていき、全体的にダークで重厚なトーンの作品ですが、最後には希望を感じられる物語だと思いました。
パズルが揃う快感──見事な伏線回収の妙
本作はスリラーとしても完成度が高く、特に伏線の回収と視点の操作の巧みさが際立っていました。例えば、序盤から散りばめられていた“マディソンの遺書の違和感”や“エリカの不可解な動き”、“ニーナの沈黙”といった要素は、終盤で見事に一本の線として繋がります。
特に第7話の過去編はパズルのピースが一気に揃う瞬間で、鮮やかに“真相の全体図”を提示してくれます。
また、アギーが書く小説というメタ的な構造もスリラー形式と相性が良いと思います。終盤でアギーの家に侵入したナイルが、原稿に赤字を入れていたことが分かるシーンは象徴的です。真実の物語を奪おうとするナイルと、それを書き換えまいとするアギーの攻防は、ストーリーそのものを舞台にした心理戦になっていてスリル満点でした。
・サスペンスタッチのドラマが好きな人はイッキ見間違いナシ!
『BEAST -私のなかの獣-』のまとめ
『BEAST -私のなかの獣-』は、喪失や恐怖に揺れる人間の心理を容赦なくえぐり出す、超スリリングな極上サイコスリラーです。
複雑に絡み合う嘘と真実が予想を裏切る展開を生み出し、最後まで目が離せません! 絶対に見逃せない1本なので、ぜひNetflixでチェックしてみてください♪
『BEAST -私のなかの獣-』の視聴方法
『BEAST -私のなかの獣-』を視聴できるのはNetflixだけ! VODの中でもダントツにコンテンツ量が多いNetflix。使ったことがない方も、この機会にぜひ♪
この他にもNetflixでは同シリーズ系統のドラマが多数配信中です。「次に観たい作品が見つからない…」という方は、以下の記事も合わせてどうぞ。
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