Netflixのリミテッドシリーズ『ゼロデイ』は、全米を巻き込んだサイバーテロの余波と、事件の捜査を指揮することになったジョージ・マレン元大統領が巻き込まれていく陰謀が描かれるシリーズ。名優ロバート・デ・ニーロにとって、ドラマシリーズ初主演作となる本作で何が起こるのか、ネタバレあり・なしでダイブイン(考察)していきます!
『ゼロデイ』の概要
『ゼロデイ』のあらすじ(ネタバレなし)
ある日、サイバー攻撃が1分間続くテロ事件が勃発して全米が大混乱に陥り、4000人近くの尊い命が奪われる。この事件を捜査するためにゼロデイ委員会が設定され、政界から引退したジョージ・マレン元大統領が指揮官として任命される。
最初、複数の情報や証拠により、ロシアが黒幕だとの結論が出かける。ところが、米国内で活動しているテロ集団や、超右派の番組司会者エヴァン・グリーンの関与が疑われる情報が次々と飛び出し、捜査は難航。捜査を続けるうちに、マレン元大統領は原因不明の幻覚や幻聴に悩まされるようになる。情報提供者の情報から、マレン政権時代に中止された化学兵器プロジェクト「プロテウス」の存在が浮上し、マレンの症状もその影響ではないかと懸念される。
その後、マレンに近しい人物の死で事件解決の大きな手掛かりへ繋がり、サイバーテロの首謀者が判明したかに思われた。ところが、ある人物が関与していた驚きの真実と、事件の全貌が明らかになっていく──。
『ゼロデイ』海外の評価&筆者の感想(ネタバレなし)

出展元:https://www.netflix.com
『ゼロデイ』は、名優ロバート・デ・ニーロにとってドラマ初主演作となるシリーズとあって、かなり期待していたのですが、なんだかマレン元大統領が見ている幻覚のように、輪郭のハッキリしない抽象画を見せられているような気分になったのは筆者だけでしょうか。
全6話構成なので、本来ならもっとテンポ良くストーリーが進むはずが、なんだかダラダラと冗長なため、なかなかストーリーに引き込まれず、それなのに最後の最後で駆け足で首謀者の正体と結論を突き付けられ、無責任に放置されたような気分に……。
ストーリー設定やコンセプト、キャラクター像やその関係性も悪くないはずなのに、十分に時間をかけて焦点が合わされていない感じが否めませんでした。だから全体的にぼんやりとして、パンチに欠けているように思えたのかもしれません。そのせいか、サイバーテロの首謀者の正体が分かっても、驚愕!とはなりませんでした。
ロバート・デ・ニーロをはじめ、ジェシー・プレモンスやマシュー・モディーン、コニー・ブリットン、リジー・キャプランといった豪華キャストが揃っているのに、役者の魅力と実力が十分活かされていない印象ですごく残念でした。
『ゼロデイ』のキャスト
『ゼロデイ』の全あらすじ(ネタバレあり)
マレン元大統領が政界に復帰
ある日、米国でサイバー攻撃が1分間続くテロ事件が起きて国中が大混乱に陥り、4000人近くの尊い命が奪われる。ミッチェル現大統領はテロ事件を捜査するために、法執行機関と情報機関を合体させたようなゼロデイ委員会を設立し、政界から引退したジョージ・マレン元大統領を指揮官として任命する。
マレンの娘で議員のアレクサンドラは、捜査が失敗した時の生贄にされるだけだと言い、父親の政界復帰に猛反対する。しかし、息子の死を理由に大統領の一期目で辞任し、任務を放棄したことが心残りだったマレンは、ゼロデイ委員会で指揮を執ることに決める。
最初、複数の情報や証拠により、マレンとゼロデイ委員会の疑惑はロシアへ向く。捜査が進む中、マレンは幻覚を見たり幻聴が聞こえるようになり、体に異変を感じ始める。
マレンの秘蔵っ子のロジャーは、ヘッドファンドマネージャーのロバート・リンドンと密会し、彼に借りがあって秘密を握られているロジャーは、リンドンからゼロデイ委員会の目をモスクワに向けるよう指示され、「NO」と言えない。
捜査が進む一方、ドライヤー下院議員が率いる議会は、ゼロデイ委員会を監視する委員会を設置し、その指揮者としてマレンの娘アレクサンドラが任命される。そんななか、ここ最近、アレクサンドラは元恋人ロジャーへの気持ちが再燃し、関係が復活し始めていた。
テロの首謀者はロシアに思われたが……
その頃、ニューヨークに拠点を置くハッカー集団の本拠地が、GRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)の工作員に襲撃され、ハッカーたちが殲滅される事件が発生。その場から、かろうじて逃げた男が監視カメラにキャッチされ、彼はNSA(米国家安全保障局)のハッカー集団TAOのメンバーだった。
ミッチェル大統領とゼロデイ委員会はロシアを疑っていたが、テロの首謀者が米国当局である可能性が浮上。しかし、後にロジャーが情報提供者から得た情報により、国内のテロ組織リーパーズの銀行口座に莫大な金が振り込まれていたことが明らかになり、その金の流れを追った結果、エリック・ヘインズという男が関与していたことが判明。ロシアが首謀者ではないことが確定し、米国当局に対する疑念も晴れる。
ゼロデイ委員会に拘束されたヘインズは、マレンの尋問により、裏でサイバー攻撃の糸を引いていたレオンという男の存在を明かす。
捜査は徐々に前進を見せていたが、テクノロジー企業パノプリーのCEOモニカ・キダーは、その進行具合に不満抱いていた。メディアに大きな影響力を持つ彼女はマレンに連絡を取り、最新テクノロジーを使って黒幕を突き止められると主張する。
プロテウスの謎
時おり幻覚や幻聴、記憶隔離に悩まされていたマレンは、情報提供者との会話で「プロテウス」という名前が挙がっていたことを思い出す。プロテウスは、マレン政権時代にCIAが計画を進めていた化学兵器のプロジェクトだった。
マレンの新補佐官として就任したヴァレリー・ホワイトセルは、プロテウスの開発メンバーだった男性から、プロテウスは神経ガスで幻聴や幻覚を引き起こし、記憶隔離などの症状も現れるとの説明を受ける。マレンが悩まされている幻覚などの症状は、プロテウスが彼に使用されている可能性を示していた。
エヴァン・グリーンの逮捕
その頃リンドンは、彼の不正を追及している超右派の番組で司会を務めるエヴァン・グリーンを何とかするよう、ロジャーに指示を出す。ロジャーは情報提供者から、グリーンとヘインズが過去に何度も同じ場所に居合わせた写真を渡され、その写真をきっかけにグリーンの調査が開始する。その結果、グリーンは逮捕されて酷い拷問を受けるが、写真が合成であることが判明して釈放される。
ロジャーの告白
ロジャーはリンドンの手下から脅され、マレンの精神状態が不安定である証拠を掴めと指示を受け、マレンが意味不明な言葉を綴っているメモ帳を盗むことを考える。しかし、父親のように彼を慕っていたロジャーは彼を陥れることが出来ず、その代わりに、リンドンが握っている自分の秘密をアレクサンドラに打ち明ける。昔、ロジャーは嫉妬心から、アレクサンドラと当時の恋人のスマホをハッキングしたことがあったのだ。その告白でアレクサンドラの関係がダメになることは分かっていたが、これ以上、リンドンの命令に従うことに我慢できなかったのだ。
その告白でリンドンの呪縛から逃れたはずだったが、アレクサンドラの家から戻ったロジャーをリンドンの手下が襲い、彼は麻薬の過剰摂取を装って殺害されてしまう。
無線ラジオが解決の鍵に
ロジャーは殺される前、リンドンが無線ラジオを使い、何者かと連絡を取っているのを目撃していた。気になったロジャーは自分でも無線ラジオを手に入れ、リンドンが使っていた周波数に合わせて情報を探る。ロジャーの死後、マレンは自分の手帳に挟まれていたメモを発見し、そこには「1140」という周波数が記されていた。ロジャーは、マレンに手掛かりを残していたのだ。マレンは、チームと共に「1140」の周波数で交換されている暗号の分析を開始する。
さらにロジャーの死後、彼のマンションの監視カメラを調査したところ、そこに映っていたのはサイバー攻撃を糸を引いていたレオンで、なんと彼はキダーの手下だと明らかに。ゼロデイ委員会は、サイバー攻撃にキダーが関与している証拠を掴み、SWATチームを率いて彼女の邸宅を包囲。キダーのセキュリティが発砲したため激しい銃撃戦となるが、彼女は逮捕される。
キダーの逮捕により、彼女が開発した技術で、米国民の80%のスマホにマルウェアが仕込まれていたことが分かる。しかしマレンは、彼女が一人でテロ攻撃を実行したとは思えないと、自分の考えをヴァレリーに伝える。
真の黒幕が明らかに
その頃、アレクサンドラはドライヤー議員や他の党員らと集まり、「すべてを白状するべきだ」と彼らを説得していた。なんと首謀者はドライヤーたちで、キダーはテロ計画を進める駒にすぎなかったのだ。NSAが開発したサイバー兵器は、キダーが開発したアプリの自動更新を通じ、瞬時に拡散していったことが明らかになる。ドライヤーの狙いは、サイバーテロを起こすことで国民を団結させ、超党派主義の新時代をもたらし、国の広範な分裂を終わらせることだった。
アレクサンドラはドライヤーに全てを明かすことを止められるが、マレンと母親に自分がテロに関与していたことを打ち明ける。その後、マレンはドライヤーと密会して彼を問い詰めるが、彼にアレクサンドラが一生刑務所に入ってもいいのかと脅され、逮捕後の拘留中に自殺したキダーと、国外へ逃亡したリンドンに罪を着せることで合意する。
マレンは議会で捜査の結果を発表する際、最初はプロンプターを読みながらスピーチを続けていたが、途中でアレクサンドラが書いた自白書を読み出し、サイバー攻撃の首謀者であるドライヤーや他の議員たちの名前を挙げて告発。国民に真実を明かした。
『ゼロデイ』の見どころ・考察(ネタバレあり)

出展元:https://www.thewrap
マレンにプロテウスが使用されたのか?
本シリーズでは、テロ攻撃の首謀者が最後に明かされましたが、過去にCIAが開発したプロテウスが、マレンに使われたのかどうかの答えは出ませんでした。
隠居生活を送っていたマレンは、息子の死を乗り越えていない状態で重い任務に就き、精神的に大きなプレッシャーがかかったことで幻覚や幻聴などの症状が出た可能性があります。
また、マレンの高齢も症状の原因ではないかとも考えられ、しかもプロテウスは、マレン政権時代にCIAが開発した兵器です。そのプロジェクトに自身が関与したことで、マレンは自分にプロテウスが使用されたと思い込み、似たような症状を感じたのかもしれません。
その答えは視聴者に委ねられる形となりましたが、全話を通してぼんやりと焦点が定まらない印象だったので、プロテウスがマレンに使用されたかどうか、ハッキリ答えを出しても良かったのでは……?と思いました。
『ゼロデイ』は近未来を予知…!?
イーロン・マスクを彷彿とさせるキダー
ネタバレなしの感想で、本シリーズをかなり辛口コメントでレビューしましたが、一つ面白かったのが、『ゼロデイ』が奇妙にも近未来を予知していた点です。
テクノロジー業界の大物キダーは風変りで物議を醸す人物で、明らかにイーロン・マスクがモデルになっていると思われます。現在、マスクは米国大統領の座に復帰したドナルド・トランプとのブロマンスぶりが話題となり、政界に足を踏み込みつつある彼の存在に脅威を感じる人は少なくないようです。
マスクとトランプ大統領の癒着関係が続けば、SNSのXを所有するマスクが、大統領や共和党に有利な情報を流したり、情報を操作する可能性が考えられるからです。何だか、キダーとNSAの関係を思わせますよね。
バイデン元大統領とマレンの選択の違い
もう一つの予知は、バイデン元大統領の息子ハンターの件です。彼は、約2億円を脱税した疑惑で実刑を科される危機に瀕していたのですが、元大統領が任期終了前に息子に恩赦を与えて無罪放免に。国民から大きな非難を浴びました。
対して、『ゼロデイ』のマレンは、サイバーテロに関与した娘の罪を公に発表して弾劾。アレクサンドラが自白書を用意し、自分の罪に責任を負う覚悟を決めていたということもありますが、筆者はバイデン元大統領とマレンの選択の違いについて考えてしまいました。
『ゼロデイ』の配信開始日から逆算すると、マスクと政界の関わり合いもバイデン元大統領の恩赦も、おそらく撮影後に起きたことなので、番組が奇妙にも近未来を予知していたことになります。それにしても、ハンター・バイデンは実刑を逃れただけでなく、2億円の税金納付もチャラになったのでしょうか。そこが超気になる……。
ジェシー・プレモンスの激痩せに驚愕!
この投稿をInstagramで見る
海外ドラマファンの方なら、ロジャー役を演じたジェシー・プレモンスは、『ブレイキング・バッド』などでお馴じみですよね。そして筆者も含め、多くの人が彼の激痩せぶりに驚いたのはないでしょうか。
『ブレイキング・バッド』では細身体型だったのに、ここ近年ですっかり恰幅がよくなったジェシー。ロバート・デ・ニーロと共演した2023年の公開映画『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』でも、立派な太鼓腹でした。激痩せしたら、ますますマット・デイモンにソックリ! ちなみにジェシーは、2000年の映画『すべての美しい馬』でマット扮するキャラクターの子役時代を演じており、その他人の空似ぶりがキャスティングの決定打になったことは間違いないでしょう。
『ブレイキング・バッド』の放送当時、番組のファンは、主人公ウォルターが精製したドラッグ「ブルーメス」にちなんで、ジェシーを「メス・デイモン」との愛称で呼んでいたのだとか(笑)。何だか話がそれてしまいましたが、それぐらいジェシーの激痩せぶりが強烈すぎて、『ゼロ・デイ』の全てが霞んでしまったほど! 番組がぼんやりした印象だったのは、プロテウスのせいでも演出の悪さでもなく、ジェシーのせいだったのでしょうか(笑)。
超豪華キャストが揃った政治スリラードラマで、一番強烈に印象に残ったのがジェシー・プレモンスの激痩せだったとは、ある意味すごい番組だと言えるかもしれません(笑)。
『ゼロ・デイ』のまとめ
名優ロバート・デ・ニーロにとって、ドラマシリーズ初主演作ということで期待していましたが、物足りなさが残る迷作となってしまった『ゼロ・デイ』。とはいえ、あくまで個人的な意見なので、デニーロの演技を堪能したい人や政治スリラーが好きな方は、ぜひNetflixでチェックしてみてください♪

