Netflix映画『84㎡』は、貯金をつぎ込んでアパートを購入したが男性が階間から聞こえてくる不可解な騒音に悩まされ、マイホームが悪夢のような場所へと変貌していく様が描かれるダークスリラー。韓国発の映画で何が起きるのか、キャストやあらすじの紹介に加え、ネタバレなしの感想とネタバレありの考察でダイブインしていきます!
【本記事の注目点】
・ネタバレを踏みたくない方へ
前半ではネタバレなしのあらすじ&海外評価・筆者の感想を紹介しますので、安心して作品を視聴すべきかどうか判断してみてください。
・ネタバレありで深掘りしたい方へ
後半ではネタバレありの全あらすじ&見どころ・考察で掘り下げ、作品の魅力を余すことなくお届け! すでに視聴済みの方も、おさらいとしてお楽しみください♪
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『84㎡』の概要
『84㎡』のあらすじ(ネタバレなし)
ソウルのマンション価格が高騰を続けるなか、結婚を控えたウソンは駆け込み需要の波に乗り、84.98㎡の新築マンションを購入する。近隣にはGTX(広域急行鉄道)の新路線が建設予定で、この物件は将来的に大きな利益を生むと期待されていた。
しかし2024年、住宅価格は急落。GTXの計画も不透明なままで、ウソンの婚約は破談して金利は上昇し、ローンは収入を超えて生活を圧迫する。会社の備品を持ち帰って節約し、退勤後はフードデリバリーのバイトに励む日々が続く。
それだけでも辛いのに、上階から聞こえてくると思われるスマホのアラーム音や、足音などの階間騒音に悩まされるウソン。14階に住む彼は、騒音の発生源を突き止めようと15~18階の住人たちに問いただしていくが、誰もが関与を否定。ウソンは次第に疑心暗鬼と孤立を深めていく。
やがて、苦情を訴える立場だったウソン自身が騒音の加害者として疑われはじめ、彼はマンション全体に渦巻く不可解な謎に巻き込まれていく──。
果たして、ウソンは自らにかけられた疑いを晴らし、騒音の発生源を突き止めることができるのか……?
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『84㎡』海外での評価&筆者の感想(ネタバレなし)
タイトルにある『84㎡』は、韓国で人気があるマンションの広さだそうですが、実は筆者自身が、購入したマンションで階上からの騒音に悩まされた経験があるので、本作は他人事だとは思えませんでした。
この映画は、そんなリアルな“音”の恐怖を通じて、人間の内面にある怒りや孤独、そして脆さをえぐり出します。筆者の体験談はネタバレなしの見どころ・考察で綴っていますので、興味がある方はチェックしみてください。
物語の舞台は、ソウルの高級マンション。一見すると理想的な住環境ですが、そこに住む人々の関係性や、マンションという閉鎖的な空間が持つ圧迫感が、少しずつ不穏な空気を醸し出していくところがポイント。
不動産価格の高騰やローン返済、所有欲や見栄といった韓国の現代社会が抱える不動産事情が、物語の背景に巧みに織り込まれていて、ただのスリラーでは済まされない重層的なテーマが潜んでいます。
大きな事件が立て続けに起きるわけではないのに、最後まで張り詰めた空気に引き込まれ、見終わった後には妙な疲労感を覚えました。
派手な演出はなくとも、社会風刺としてもサスペンスとしても完成度の高い一作で、騒音や集合住宅のストレスに心当たりのある方には特に刺さる作品だと思います。
『84㎡』の登場人物&キャスト
ウソン(カン・ハヌル)
貯金をつぎ込んでアパートを購入したサラリーマン。階間の不可解な物音に悩まされる。
ウンファ(ヨム・ヘラン)
アパートの理事長で住民代表。ウソンに同情して理解を示す態度を見せていたが……。
ヨン・ジノ(ソ・ヒョヌ)
ウソンの上階に住む人物。騒音を発している張本人だと思われていた。
『84㎡』の全あらすじ(ネタバレあり)
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・騒音に追い詰められた男の転落
・人生逆転のはずが…転落の始まり
・ついに暴かれる“騒音地獄”の真実
・ジノの正体と目的
・騒音の闇に終止符を打つ激闘
騒音に追い詰められた男の転落
2021年、ソウルのマンション価格が高騰し続けるなか、ウソンは結婚を控え、最後の駆け込み需要に乗じて84.98㎡の新築マンションを購入する。ソウルの不動産市場では、近隣に建設予定のGTX新路線の影響もあり、この物件は大きな利益を生むと見込まれていた。
しかし2024年、住宅価格は大幅に下落し、GTXの将来は依然として不安定な状況だった。ウソンの婚約は破談となり金利は上昇、ローンは収入を超え、彼の生活は一変する。
荒れた部屋に止まない騒音、追いつめられる日々……。上司からは嫌味を言われ、婚約破棄を悔やむ友人の言葉が胸に刺さる。会社の備品を持ち帰り、わずかな節約にすがる生活だ。
騒音の発生源を巡り、14階に住むウソンは15~18階の住人に次々と問いただしていくが、誰もが責任を否定し、疑心暗鬼と孤立が深まっていく。15階には柄の悪そうな独身男性、16階には防犯マットを敷いている家族、17階には老夫婦、18階には住民代表の理事長が住み、住民同士の関係も複雑だ。
ウソンはようやく騒音源の一家が“間借り”だと知るが、オーナーからは「2ヶ月後に追い出す」と言われただけで即時の解決にはならない。
出口の見えない騒音地獄。ついには自転車のタイヤが切り裂かれ、階下の住人からの嫌がらせのメモが散乱する。かつて“夢のマイホーム”だった場所は、ウソンにとって生き地獄と化していた。
人生逆転のはずが…転落の始まり
ウソンは、同僚から「9倍の利益が出る」という怪しげな仮想通貨投資の話を持ちかけられる。ローンに追われる生活に耐えられなくなっていた彼は、8億5千万ウォンでマンションを売却し、手にした頭金でコインを購入。コインを売却するために、指示された日時を待つ。久々に希望を見出し、荒れた部屋を片付けて前向きになるが、不可解な騒音と不気味な隣人には悩まされ続ける。
そんななか、何者かがウソンの部屋にスピーカーを仕掛けていたことが発覚し、ウソンが騒音の犯人と疑われる。隣人との揉め事で警備員が介入し、ウソンは逮捕されてしまう。コイン売却の時間が迫る中、何とか理由を作って手錠を外させ、ギリギリで仮想通貨を売却する。
ついに暴かれる“騒音地獄”の真実
ウソンは、13階の住人によるスピーカー工作の証拠で釈放されるが、仮装通貨の投資で全財産を失い、飛び降り自殺を決意。しかし15階に住んでいるジノが、騒音の犯人はウソンではないと理解してくれたため、改めて二人で住人と話合うために13階の部屋へ行く。
しかし、一家は不在で鍵が開いていたため、部屋に入って彼らの不動産関連の書類を確認したところ、理事長が騒音を利用して住人を退去させ、物件を独占して利益を得ようとしている疑いが浮かび上がる。
ジノと共に理事長を追及する計画を立てたウソンは、彼女の部屋でガスエアガンや指紋認証ドアを発見。しかし、ウソンの部屋に仕込まれたスピーカーに繋がれていたスマホのWi-Fi源を辿ると、ジノの1501号室であることが判明。
彼の部屋に忍び込んだウソンは、ジノが住民を調査していたことを知り、遠隔操作で様々な騒音を発する装置も発見する。騒音の元凶はジノだったのだ。
ジノの正体と彼の目的
ジノの部屋に潜んでいたウソンは、彼に殺意を抱きながらも実行できずにいた。そこへ13階の住人の母親が訪れ、更新契約のためにジノと共謀してウソンを陥れたことが明らかに。
しかし、二人の間で口論が勃発し、彼女がジノに殺される瞬間を目撃する。ウソンはジノに、不動産のフル投入で人生を台無しにした若者の象徴だから、犯人役に選んだと言われる。
ジノは、不正工事と階間騒音問題を解決するために覆面取材をしていたのだった。
騒音の闇に終止符を打つ激闘
ウソンはジノに殺されかけるが、協力を申し出て命をつなぐ。二人は理事長の部屋に忍び込み、彼女と彼女の夫を拘束。理事長は検事時代に手抜き工事の隠蔽に関わり、手抜き工事と知りながらマンションを購入し始めたのだった。
ジノは理事長を問い詰めるが、彼女は騒音の本当の原因は人間だと言う。混乱の中、ジノと理事長の夫、理事長が互いを殺し合う結果となり、ウソンはジノが探していた理事長の不正が記された帳簿と、自分のマンション売買契約書を燃やす。
マンションの建物から出たウソンは道に倒れ、意識が戻った時は病院にいた。回復した彼は母親と地元へ戻るが、結局ソウルのアパートに戻り、階間騒音を再び耳にして不穏な笑い声を上げながら物語は幕を閉じる。
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『84㎡』の見どころ・考察(ネタバレあり)
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・住んでみないと分からない集合住宅の現実
・夢のマイホームが地獄に変わるとき
・騒音は権力や支配を象徴するツール
・ラストのウソンの笑いが意味するものは?
住んでみないと分からない集合住宅の現実
普段あまりアジア作品を観ない筆者が、韓国映画『84㎡』に惹かれたのは、“階間騒音”という身近なテーマが扱われていたからです。Netflixの作品紹介を読んだ瞬間、「これ、まさにうちのことでは!?」と、他人事とは思えなかったのです。
筆者は数年前に、リノベーション済みの中古マンションを購入しました。3階の角部屋で、間取りも広さも理想通り。近所の環境も申し分なく、まさに一目惚れで一瞬の迷いもなく購入を決めたのです。ところが、住み始めてから意外な問題が発生しました。
毎朝5時になると、上の階から「ゴゴゴゴ……!」と床を擦るような激しい音が響いてきたのです。最初は我慢していたものの、次第に睡眠不足が重なり、ついに限界に。思い切って上階の住人宛てに置手紙をしたところ、その日の夕方、上の階に住む女性が直接訪ねてきてくれました。
そして、あの正体不明の騒音の原因が“掃除機”だったことが発覚。正直、掃除機とは思えないほどの衝撃音だったので驚きましたが、話し合いの結果、掃除の時間を朝6時に変更してもらえることに(←それでも早い!)。
当時は8時頃に起きる生活をしていたのですが、「騒音にイライラするぐらいなら、いっそ早起きしてしまおう!」と気持ちを切り替え、早寝早起きを始めることにしました。それ以来、むしろ健康的な生活を送るようになったので、結果オーライだったのかもしれません。
とはいえ、やはり集合住宅というのは、実際に住んでみないと分からない部分が多いのがネックです。幸い、筆者はウソンのような深刻な体験はせずに済みましたが(笑)、日々の小さなイライラが積もると大きなストレスになることを身をもって実感しています。だからこそ、この作品のテーマは他人事とは思えず、かなり刺さりました。
夢のマイホームが地獄に変わるとき
『84㎡』は、単なる騒音トラブルを描いたサスペンスかと思いきや、観るうちに社会的なテーマが次第に浮かび上がってくる奥行きのある作品です。
ウソンは結婚を控え、ソウルで念願の“マイホーム”を手に入れた若者。マイホームに夢を抱く彼の姿は、不動産価格が高騰し続ける韓国の現実と深くリンクしていて、「家=成功や安定の象徴」という価値観に縛られた人々の葛藤がリアルに描かれています。
結婚と住宅購入という“普通の幸せ”を目指していた彼が、経済的にも精神的にも追い詰められていく姿には、多くの視聴者が自分を重ねずにはいられないのでは!?
物語の舞台となるマンションは、GTX新幹線が通る予定ということもあり、将来的な資産価値への期待から、多くの人が“夢のマイホーム”として見なしていた物件です。ところが、その開発計画は途中で不透明になり、価格は急落……。政治や行政、そして不動産業界の思惑が複雑に絡む様子は、まさに現代韓国社会の縮図と言えそうです。
特に、GTXのようなインフラ整備は希望の象徴として宣伝される一方で、計画の変更や遅延に対する責任は曖昧なまま。人々は「今買わなければ損をする」と煽られ、後戻りできない選択を強いられがちです。
さらに本作では、手抜き工事が疑われるほどの酷い階間騒音が、住人たちの不信感やストレスに火をつけていきます。最初は日常の小さな不快感にすぎなかったものが、やがて住民同士の対立や孤立を生み、ほんの些細な疑念や行き違いが一気に人間関係を壊していく── 。その過程があまりにも生々しくて、怖ろしいと思いました。
騒音は権力や支配を象徴するツール
劇中で描かれる階間騒音は、物理的な音そのもの以上に、「上の住人が下の住人を支配する構図」を浮き彫りにしるように感じました。
音が上から下へと一方的に響く構造そのものが、上下関係のメタファーとして機能しているのではないでしょうか。しかも、その“音”は無視できないレベルで精神的・肉体的に苦痛を与えるのに、加害者は「そんなつもりはなかった」と言い逃れることが出来てしまう。
この映画では、騒音が“目に見えない暴力”として描かれていて、それを通して人が他者をどう支配するか、あるいはどう従属させられるかが可視化されているのではないでしょうか。
騒音が単なる生活音ではなく、権力や支配を象徴するツールとして機能していたように感じました。
ラストのウソンの笑いが意味するものは?
ラストシーンは、ウソンがソウルの自分のアパートに戻って階間騒音を再び耳にして、不穏な笑いを発して幕を閉じました。その笑いの意味ですが、騒音の正体を暴いて不動産業界と権力の闇に一歩踏み込んだはずなのに、自分の生活が何ひとつ改善されていないことに対する皮肉ではないでしょうか。
騒音の元凶を排除したはずなのに、再び階間騒音を耳にし、もはや怒りを通り越した現実への乾いた諦めというか、虚無感に包まれたからではないかと思いました。
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『84㎡』のまとめ
『84㎡』は、韓国の不動産バブルと階間騒音問題を背景に、個人の生活に忍び寄る見えない支配構造を描いた心理スリラー。
現代都市生活のリアルな闇を鮮明に映し出していて見応えがあり、社会風刺としてもサスペンスとしても完成度の高い作品なので、ぜひNetflixでチェックしてみてください!
『84㎡』の視聴方法
『84㎡』はNetflixで独占配信中! VODの中でもダントツにコンテンツ量が多いNetflix。使ったことがない方も、この機会にぜひ♪
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