ドイツ発のNetflix映画『ブリック』は、突如“黒い壁”に覆われたアパートで、男女数名が閉じ込められ、脱出不能の恐怖に追い詰められていくSFスリラー。なぜ彼らは閉じ込められたのか?謎の壁の正体とは? キャストやあらすじを紹介しながら、ネタバレあり・なしで本作の核心にダイブイン(考察)していきます!
【本記事の注目点】
・ネタバレを踏みたくない方へ
前半ではネタバレなしのあらすじ&海外評価・筆者の感想を紹介しますので、安心して作品を視聴すべきかどうか判断してみてください。
・ネタバレありで深掘りしたい方へ
後半ではネタバレありの全あらすじ&見どころ・考察で掘り下げ、作品の魅力を余すことなくお届け! すでに視聴済みの方も、おさらいとしてお楽しみください♪
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『ブリック』の概要
『ブリック』のあらすじ(ネタバレなし)
『ブリック』は、ドイツ発のスリラー映画。ある朝、夫婦のティムとオリヴィア(リヴ)が目を覚ますと、アパート全体が黒いレンガ状の壁に完全に覆われ、外に出られなくなっていた。
壁は叩いても蹴ってもびくともせず、電動ドリルさえ無力。絶望する中、二人は隣室との壁を壊して隣人と連絡を取り合い、4人で地下の防空壕へ続く道を探しながら、階下へと進んでいく。
その過程で仲間が増え、謎めいた壁の正体や封鎖の理由が少しずつ明らかに。果たしてティムたちは、この異常な状況から無事に脱出できるのか──?
・ヨーロッパのダークな作品が好きな人におすすめ♪
『ブリック』海外での評価&筆者の感想(ネタバレなし)
映画『ブリック』は、シンプルなアイデアと限られた舞台設定ながら、観る者をグイグイ引き込むスリラー作品です。密室に閉じ込められた登場人物たちが、その異常な状況から何とか脱出しようと奮闘する姿を描いていて、まるで脱出ゲームを体感しているような、没入感あるスリリングな展開を楽しめました。
ストーリーが進むにつれて、「この壁は何なのか?」「どうして閉じ込められたのか?」「脱出の手がかりはどこにあるのか?」といった謎が少しずつ明かされていく展開が手に汗握ります。アイテム探しや限られたヒントから抜け道を見つけ出す展開は、密室スリラー好きや、パズル的な作品が好きな方にはたまらないポイントではないでしょうか。
また、この映画の魅力は謎解き要素だけでなく、登場人物たちの関係性や心理描写にもあります。夫婦間のすれ違いや、他の住人たちとの衝突と協力、そのなかで浮き彫りになる人間の本性など、キャラクター同士のダイナミズムが物語に厚みを与えていて、単なる脱出劇に終わらない奥行きを感じました。
スケールは決して大きくはないものの、緊張感とテンポの良さ、そして人間ドラマが上手く組み合わさった良作です。また、1時間39分とコンパクトな尺なので、肩ひじ張らずにサクサクっと楽しめる作品としてピッタリではないでしょうか。
スクロールに疲れた方へ
・ネタバレを知りたい方は、全あらすじ(ネタバレあり)へ飛ぶ
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・Netflixで8月に配信される新作をチェック♪
『ブリック』の登場人物&キャスト
ティム(マティアス・シュヴァイクホファー)
ビデオゲームの開発者。妻オリヴィアが流産して以来、夫婦仲に溝が出来ている。
オリヴィア(ルビー・O・フィー)
ティムの妻で建築家。2年前に第一子を流産する。
マーヴィン(フレデリック・ラウ)
ティムとオリヴィアの隣の部屋を民泊で借りている、血の気の多いタイプ。
アナ(サルバー・リー・ウィリアムス)
マーヴィンの恋人。二人揃ってドラッグとパーティーにハマっている。
リア(シラ=アナ・ファール)
階下に住んているティーンエイジャー。
オズワルド(アレックス・ワーナー)
リアの祖父。
アントン(ヨゼフ・ベローセク)
イプシロン社のプログラマー。
ユーリ(ムラタン・ラスム)
アントンの友人。
『ブリック』の全あらすじ(ネタバレあり)
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以下、物語の展開を時系列順にまとめました。
・突然現れた謎の壁
・地下を目指して階下へ移動
・監視カメラの謎と大家の死
・地下への脱出と黒い壁の正体
・犠牲とともに深まる謎
・壁を開ける方法を発見
・建物からの脱出
突然現れた謎の壁
ビデオゲーム開発者のティムと建築家の妻リヴは、2年前の流産以来、夫婦関係に溝が出来ていた。リヴは改装したバンで旅に出ようと提案するが、ティムは仕事を理由に断り、リヴは落胆する。
翌日、別れを決意したリヴが家を出ようとすると、玄関は黒いブリック状の壁で覆われて外に出られない。壁は工具でも傷つかず、水も止まり窓の外も同様だった。困った二人は隣室との壁に穴を開け、隣人のティナとマーヴィンと話すと、そちらも同じ状況だった。
地下を目指して階下へ移動
ティムは壁に強い磁力があることに気づき、釘やフォークを貼り付けて調べた結果、4つの正方形部分だけ特に磁力が強いと判明。すると、壁が振動を始めて貼り付けていた金物が飛び出し、ティムとリヴは間一髪で伏せて難を逃れる。
一方、隣のティナとマーヴィンが騒いでいたため、ティムたちが様子を見に行くと、2人はドラッグでハイになっていた。落ち着いた後、建築家のリヴがこの建物は19世紀築で、戦時中は防空壕として使われていたこと、床を壊せば地下経由で外へ出られる可能性があると説明する。
監視カメラの謎と大家の死
4人が床を壊して下の階へ降りると、老人オズワルドと孫娘リアがいた。物資を盗みに来たと誤解したオズワルドが銃を向けるが、ティムの説明で誤解は解け、6人でさらに階下へ。すると、壊れた天井の火災報知器にカメラが仕込まれているのを発見する。
監視の犯人は大家だと考え、隣室の大家の部屋へ壁を壊して向かうと、彼は両腕を切断された状態で死亡していた。リヴは室内の新聞から、ハーフェインシティで大火災があったことに気づき、それが今回の事態と関係しているのではとティムに示唆する。
地下への脱出と黒い壁の正体
6人がさらに階下へ降りると、住人アントンの部屋に辿り着き、そこに彼の友人ユーリが現れる。ユーリは、壁は細菌や核兵器すら防げる超先端技術で作られていると説明。アントンは壁の傍で心不全を起こし、ペースメーカーが機能しなくなって死亡したという。
ユーリは「外に出れば被爆して即死だ」と警告するが、6人はさらに地下へ向かう。だが、外へ通じるはずの扉も黒い壁で封鎖されていた。
犠牲とともに深まる謎
脱出の望みを絶たれたマーヴィンは怒りに任せてオズワルドから銃を奪い、黒い壁に発砲。しかし弾が跳ね返り、オズワルドに命中して死亡してしまう。
その死をきっかけに、皆が死について語り始め、リヴは2年前に流産した過去を告白。ティムがそれを責めたことで、夫との確執を抱えるリヴと激しい口論に発展する。
その後5人は、壁や大家について調べていたアントンの部屋に手がかりがあると考え、二手に分かれて捜索を開始。大家の部屋で発見したタッチパネル式のリモコンを使って隠し部屋を開くと、そこには住人たちの部屋を監視する4台のコンピューターが設置されていた。
壁を開ける方法を発見
アントンの部屋を捜索していたレアは、彼の首に絞められた痕を発見。ティムも監視映像から、ユーリがアントンを絞殺する瞬間を見つけて急行するが、レアはすでに死亡していた。
ティムとマーヴィンは、証拠を燃やしていたユーリを拘束。ユーリが、コードを解いたアントンのメモを見つけたレアを殺したのだった。
リヴはアントンの名刺から、彼が「ナノディフェンス/イプシロン社」に勤務していたことを突き止める。会社は火災のあったハーフェインシティにあった。
ティムは監視映像とスマホから、アントンが壁を開けるアプリを作っていたと推測。壊れたスマホのSIMを別の端末で起動すると玄関の扉が開くが、黒い粒子が渦巻いていた。アナが指を入れると粒子に引き込まれ、下半身がちぎれて死亡。
アナの死に絶望したマーヴィンはユーリを撃ち、自らも後を追って命を絶つ。生き残ったのはティムとリヴの2人だけだった。
建物からの脱出
ティムとリヴは、壁の正方形のブリックが光る回数に違いがあることに気づき、アントンの映像を手がかりに順番を割り出して壁を開くことに成功する。
しかし、生きていたユーリに襲われ、激しい格闘の末に撃退。二人はついに脱出するが、外の街も同じ黒いブリックで覆われていた。
改装した車で走り出した二人がラジオをつけると、イプシロン社の火災により極秘の防御システムが作動したことが判明。しかし、それが故意によるものか、誤作動なのかは現在も調査中だと報じられる。
物語は、ティムとリヴの旅立ちで幕を閉じる。
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・スリリングなデスゲームを描いた傑作ドラマ!
『ブリック』の見どころ・考察(ネタバレあり)
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以下のポイントに注目して考察を深掘りしていきます。
・『ブリック』が描く“パズルボックス系”の進化型
・黒い壁は“防御”ではなく“攻撃”のため?
・イプシロン社の目的は「保護」か「支配」か?
・喪失体験が繋ぐ静かな共鳴
『ブリック』が描く“パズルボックス系”の進化型
Netflixのドイツ発スリラー映画『ブリック』は、閉ざされた空間での脱出劇を描く「パズルボックス系」の作品です。
筆者は本作を観て、すぐに1997年公開のカナダ映画『CUBE』を思い出しました。複数の見知らぬ人たちが、仕掛けられた罠を解きながら脱出を目指すという超スリリングなストーリーが話題になり、2002年には続編『CUBE 2』も公開されました。
『ブリック』も、一見するとその流れを汲んだ作品のように思えますが、住人たちが“単に閉じ込められて脱出する”話ではありません。壁が持つ強力な防御機能や、「本当に外に出て大丈夫なのか?」という問いかけが物語の核心になっているところもポイントです。
ただ、その一方で、『ブリック』では全ての謎にキッチリと答えが出ていないので、人によっては「結局なんだったの?」と感じるかもしれません。『CUBE』のような明確なパズルやトラップ、サバイバルのスリルを期待すると、少し印象が異なるかもしれません。本作は論理的な謎解きよりも、閉鎖空間での人間関係や心理描写に重きを置いた構成になっているからです。
ですが、「パズルボックス系」の作品や、スリリングなスリラーが好きな人は十分楽しめる作品だと思います!
黒い壁は“防御”ではなく“攻撃”のため?
『ブリック』を観賞後に惜しいと感じたのは、黒い壁のテクノロジーや、それを生み出したイプシロン社の目的について、もう少し深く掘り下げてほしかったという点です。
壁は弾丸を跳ね返すほどのパワーがありますが、核や細菌などから人類をを守るためなら、その機能は壁の内側には必要ないはず。しかも水道まで止まってしまい、いきなり閉じ込められた人は資源不足で生き延びられません。
それに、一般人を守るための壁にしては外へ出るための方法が危険すぎるし、「本当にイプシロン社は、人類を守るためにこのシステムを開発したのか? むしろ攻撃用では!?」と疑問に思ってしまいました。
イプシロン社の目的は「保護」か「支配」か?
しかも、イプシロン社のプログラマーであるアントンが、壁の開け方を知らなかったというのも不可解です。彼の立場では、その情報にアクセスできなかった可能性もありますが、あれほど緻密な設計図やコードをメモしていたことを考えると、開け方についても把握していておかしくないはずです。
それに、人類を守るための壁なら、なぜアントンは必死に外へ出ようとしていたのでしょうか? 安全なら壁の内側にいればいい訳で、「攻撃用だと知っていたから脱出しようとしたのでは?」という仮説はあり得ると思います。
また、大家が部屋にカメラを隠して監視していたことも気になります。イプシロン社は壁を監視や、人を支配するための手段として開発した可能性もあるのではないでしょうか。
これらの点を踏まえると、黒い壁は本来、人類を守るためのものではなく“攻撃用”として開発された可能性があり、誤作動によってドイツ国民を危険にさらしてしまった──そんなシナリオもあり得そうです。
黒い壁の秘密について、掘り下げ方が足りなかったのが惜しいポイントです。映画は1時間39分と比較的短めの尺なので、例えばあと20分ほど使って、イプシロン社がどんな企業で何を目的にしているのか、壁に使われているテクノロジーの秘密なども描かれていたら、この作品のメッセージ性がさらに高まったのではないかと思いました。
喪失体験が繋ぐ静かな共鳴
劇中でアナが「私たちは選ばれた者なのでは?」と問い、自身の臨死体験を打ち明ける場面は、登場人物たちの心情に大きな変化をもたらします。
これを機にリヴは流産、リアは母親の死について語り、全員が愛する人の“死”という共通の喪失体験を打ち明けました。壁に閉じ込められ、“死ぬかもしれない”という危機的状況で彼らが直面するのは、次第に“死とどう向き合うか”という内面的なテーマへと移行していったように思います。
ですが、終盤で街全体が黒い壁に覆われていたことが明かされるため、“選ばれた6人”という設定は成立しません。おそらくこの言葉は、アナ自身の喪失感や、極限状態のなかで自分たちの存在に意味を見出そうとする、心理的なものだったのかもしれません。
そう捉えると、このシーンは人間らしくて象徴的な重要な瞬間だったと言えるではないでしょうか。
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『ブリック』のまとめ
映画『ブリック』は、シンプルなアイデアと限られた舞台設定ながら、観る者をグイグイ引き込むスリラー作品。
壁の正体や企業の目的など、謎の部分がもう少し掘り下げられていたらさらに魅力的でしたが、それでも十分楽しめる映画なので、ぜひNetflixでチェックしてみてください!
『ブリック』の視聴方法
『ブリック』はNetflixで独占配信中! VODの中でもダントツにコンテンツ量が多いNetflix。使ったことがない方も、この機会にぜひ♪
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