Netflixドラマ『ここが世界の最北端』は、住人が2,200人という北極圏の小さな町アイスコーブを舞台に、シングルマザーになった主人公シアヤが挑む人生の再スタートがコメディタッチで描かれるシリーズ。本作で何が起こるのか、キャストやあらすじなどネタバレあり・なしでダイブイン(考察)していきます♪
【本記事の注目点】
・ネタバレを踏みたくない方へ
前半ではネタバレなしのあらすじ&海外評価・筆者の感想を紹介しますので、安心して作品を視聴すべきかどうか判断してみてください。
・ネタバレありで深掘りしたい方へ
後半ではネタバレありの全あらすじ&見どころ・考察で掘り下げ、作品の魅力を余すことなくお届け! すでに視聴済みの方も、おさらいとしてお楽しみください♪
※目次のタイトルをクリックしたら、行きたいセクションへ飛ぶ仕組みです。
『ここが世界の最北端』の概要
『ここが世界の最北端』のあらすじ(ネタバレなし)
『ここが世界の最北端』の舞台は、北極圏にある住人が2,200人の小さな町アイスコーブ。イヌイットの主人公シアヤは夫ティンと6歳の娘ブンと暮らしているが、古風な妻を求めるティンとの関係に不満を覚えるようになっていた。
子育てが落ち着いたため、仕事をして自分の世界を持ちたいと思ったシアヤは職探しを開始。久しぶりの社会復帰に四苦八苦しながらも、新しいやりがいを見つけた彼女は結婚生活と人生を見直すようになる。
そんななか、思いがけない出会いや家族の秘密の発覚などを通じて、シアヤの人生の再スタートがコメディタッチでハートウォーミングに描かれる。
『ここが世界の最北端』の海外での評価&筆者の感想(ネタバレなし)
Netflixでは、北極圏に近い土地を舞台にしたシリーズとして、アイスランド発のドラマ『トラップ 凍える死体』や『カトラ』がありますが、北米側の北極圏を舞台にした作品は、『ここが世界の最北端』が初めてではないでしょうか。
一昔前の海外ドラマに詳しい人なら、1990年代に放送されたドラマ『たどりつけばアラスカ』を思い出した人もいるのでは!?
人口が2,200人という小さな町アイスコーブでは、お互いのことを知っている住民同士が助け合うというメリットがありながらも、それだけに、すぐに噂が伝わってしまうというマイナス面もあります。そんな、小さなコミュニティで起こりがちな人間関係やトラブルがコメディタッチで描かれ、都会が舞台となる作品では醸し出せない“ほのぼの感”が、何とも微笑ましくて好感度大のシリーズです。
また、不満を抱えたまま生きることをやめ、自分の望む人生を実現するために新たな一歩を踏み出すシアヤの勇気や、どんなトラブルに直面しても自分の気持ちと正直に向き合い、ポジティブに前進する彼女の姿に元気を貰えるのではないでしょうか。
全8話で1話が約30分とイッキ見しやすいのもポイントで、恋愛コメディが好きな人におすすめです♪
スクロールに疲れた方へ
・ネタバレを知りたい方は、全あらすじ(ネタバレあり)へ飛ぶ
・ネタバレありの深堀りを読みた方は見どころ・考察(ネタバレあり)へ飛ぶ
『ここが世界の最北端』の登場人物&キャスト
ニーヴィー(マイカ・ハーパー)
シアヤの母親。かなりワイルドな性格。
アリステア(ジェイ・ライアン)
久しぶりにアイスコーブに戻って来た環境コンサルタント
コミュニティーセンターの責任者。最初はシアヤと折り合いが悪かったが、後で打ち解ける。
『ここが世界の最北端』の全あらすじ(ネタバレあリ)
この投稿をInstagramで見る
・夫と別居したシアヤ
・実の父親と初対面
・コミュニティセンターに就職
・母と娘の新しい恋
・夫と再び衝突したシアヤ
・ニーヴィーのもう一つの大きな秘密
夫と別居したシアヤ
舞台は、北極圏にある住人が2,200人の小さな町アイスコーブ。イヌイットの主人公シアヤは、夫ティンと6歳の娘ブンと暮らしている。子育てが落ち着いたため、シアヤは仕事をして自分の世界を持ちたいと思い、コミュニティセンターでイベントプランナーとして働きたいと責任者のヘレンに売り込む。
ところがティンは、いとこが産む予定の赤ちゃんを養子すると勝手に決め、シアヤは「二人目は欲しくないし、仕事をして自分の世界が欲しい」と訴えるが、夫に「イヌイットの女性らしくない」と言われてしまう。
しかもティンは、アザラシ猟のコンペティションでヘマをしたシアヤを「恥さらし」だとなじり、怒ったシアヤは娘を連れて母親ニーヴィーの家に転がり込む。
実の父親と初対面
ティンにムカついていたシアヤは、鬱憤晴らしでパーティーで知り合ったイケオジの環境コンサルタント、アリステアと酔った勢いでキスをする。ところが、こともあろうにアリステアはシアナの実の父親だと明らかに!
彼もその事実を知らず、父と娘なのにキスするという、これ以上ないほど気まずい初対面になってしまった。
コミュニティセンターに就職
シアヤは、売り込みに成功してコミュニティセンターに就職するが、次々にトラブルを起こしてしまい、ヘレンに8週間以内に仕事を挽回するよう命じられる。
シアヤは、盛り上がりに欠ける老人会に子どもたちを参加させ、新旧世代の交流を実現させたことで住民に感謝され、極地研究所の最終候補地に選ばれたアイスコーブをアピールするために資金集めの野球大会を開催し、ヘレンの信用を取り戻して仕事が軌道に乗り始める。
母と娘の新しい恋
小さなアイスコーブで何度も遭遇していた二ーヴィーとアリステアは気持ちが再燃し、こっそりと情事を重ねていた。一方、シアヤはアリステアの部下で、親戚がアイスコーブに住んでいるクークと急接近。オタワに住んでいる彼は期間限定でアイスコーブに滞在していて、赴任前に恋人との関係が上手くいかなくなっていた。
シアヤはクークに心惹かれつつも、デートに誘ってくれたフランス人のアーティストとディナーへ行くことに。しかし、クークに対する気持ちを認めたシアヤは、彼に会いに行っていきなりキスをするが、なんと彼の恋人が突然アイスコーブを訪れたと知って大ショック。何ともタイミングが悪すぎる……。
ある日、シアヤはニーヴィーとアリステアが復縁したことを知り、ブンも一緒に過ごすことが多くなった祖父のアリステアにすっかり懐き、家族として過ごすようになる。
夫と再び衝突したシアヤ
シアヤは順調に新生活を進めていたが、そんななかティンが狩猟中に行方不明になる事件が発生。住民の必死の捜索で彼は救出され、シアヤは怪我をした夫を世話するために一時的に同居する。
ティンは恋愛指南書を読んだりして、シアヤが夫婦関係に何を求めているのか理解しようと務めていたが、クークとシアヤの関係を疑い、そのことが原因二人は喧嘩に。シアヤは再び家を出ていく。
ニーヴィーのもう一つの大きな秘密
ニ-ヴィーとアステリアの関係は順調にいっているかに見えたが、彼が過去の出来事をほじくり返したことが原因で大喧嘩に発展。二人が別れたことを知ったシアヤが母親を責め立てると、シアヤに隠していたもう一つの秘密を打ち明ける。
シアヤが生まれる前、16歳だったニーヴィーは第一子となる娘を出産していたというのだ。娘の父親は年上の白人男性で、彼が娘を家族に会わせるために連れて行ったきり戻ってこなかったと説明する。ニーヴィーがアリステアに娘がいることを教えなかったのは、第一子のようにシアヤも連れ去られるのではないかと心配したからだった。
アイスコーブは、研究所の本拠地には選ばれなかったが出張所が設立されることになり、アリステアが所長に決定。クークもしばらく町に残ることになり、物語が終了する。
『ここが世界の最北端』の見どころ・考察(ネタバレあり)
この投稿をInstagramで見る
以下のポイントに注目して考察を深掘りしていきます。
・アイスコーブは実在の場所!?
・伝統的な女性像からの脱却──シアヤの再出発
・北極圏で文化を守り抜く先住民の誇り
アイスコーブは実在の場所!?
『ここが世界の最北端』で舞台となったアイスコーブが、実在するのかどうか気になった人がいるのではないでしょうか、
ということで調べてみたのですが、Nunatsiaq Newsによると、最終話に登場した地図上で、アイスコーブはプリンス・オブ・ウェールズ島に位置していることが記されます。
この島は、カナダのキキクタアルク地方とキティクメオット地方に分かれたヌナブト準州に属していますが、そこに集落は存在していません。番組は、ヌナブト準州の州都イカルイトで撮影されました。
アイスコーブは架空の場所ですが、ドラマに登場したビーチやコミュニティセンター、アリステアたちが宿泊していたホテルやバーなどは実在しているため、シーズン2へ更新されて番組の人気が高まれば、村おこし的に観光客が増えるかもしれませんね。
伝統的な女性像からの脱却──シアヤの再出発
物語の舞台となるアイスコーブは小さな集落で、昔ながらの伝統や価値観が今も根付くコミュニティです。しかしシアヤは、「良妻賢母」という伝統的なイヌイットの女性像から脱し、自分自身の価値や生き方を求めています。
この設定は、女性のエンパワーメントが都会だけに限られていないこと、個人としての自由と尊厳を求める女性の物語が、辺境の地にも存在していることを訴えているのではないかと思いました。
逆に、古いジェンダー規範を押し付けるパートナーとの軋轢は、昔ほどではないとはいえ、都会に暮らす女性にも通じる現実です。いまだに、「子育てや家事をするのは女性」という固定観念がつきまとっていますからね。
シアヤは、自分の願望を「イヌイットの女性らしくない」と撥ねつけた夫ティンの元を去りましたが、すぐに噂になってしまう小さなコミュティで、この決断を下すことは容易ではなかったはず。
ですが、シアヤは自分を殺して周囲に合わせる代わりに、伝統や母親、家族といった枠組みで縛られている「イヌイット女性としてあるべき女性像」から抜け出し、自分の意志で自分の人生をデザインする方を選びました。
ひと昔前と違い、現代では女性に「選択するパワー」が与えられています。にも関わらず、不満を抱えながらも慣れてしまった生活から抜け出そうとしない女性は少なくありません。なかなか最初の一歩を踏み出せない女性は、シアヤが一念発起して新しい人生をスタートさせる姿から、大きな勇気を貰えるのではないでしょうか。
北極圏で文化を守り抜く先住民の誇り
本シリーズを語る上で、北極圏という辺境の地が舞台になっている点は外せません。劇中では、住民がイヌイット語でコミュニケーションを取るシーンが登場し、野球大会はイヌイット流で開催されました。
アイスコーブでは木が生えないため、試合で使用するバットはアザラシの骨です。またベースは使わず、先に400点を取った方が勝ちというルールなど、一般的に知られる「野球」とは全く違うスポーツですが、こういう文化の違いを興味深く視聴しました。
このイヌイット流の野球は、西洋から押し付けられたスポーツを単に受け入れるのではなく、独自に解釈・再構築する力を表しているのではないでしょうか。
劇中ではお年寄りの住民が、幼少時代に寄宿学校に強制収容され、イヌイット語を禁じられた歴史も語られました。番組で紹介されたイヌイットの文化は、単に「文化の違いって面白いよね」という表面的な視点ではなく、「どのように奪われかけた文化が生き残り、今も生き続けているのか」という視点で描かれていたのが印象的でした。
イヌイットの人たちや文化を描いた作品って少ないので、多様性を重視した、こういう番組がもっと増えていくことを願いたいです。
『ここが世界の最北端』で気になったキャスト
シアナ役のアンナ・ランブ
この投稿をInstagramで見る
シアナ役を演じたアンナ・ランブが超キュートだったので、気になってバイオグラフィを調べてみました。Inuit Artによると、2000年9月25日生まれのアンナは現在24歳で、ドラマの設定と同じくイヌイット。グリーンランドに近いカナダのバフィン島南部の都市、イカルイトの出身です。
劇中でシアナが着用していたイヌイットのモチーフをあしらったファッションもキュートで、「自分には絶対似合わないだろうな…」と思いつつも、女性キャラクターの多くが身に着けていたエスニックなロングピアスが欲しくなってしまいました。
アンナは、2019年公開の北極圏を舞台にした映画『The Grizzlies(原題)』でスクリーンデビューを飾り、アラスカを舞台にした犯罪捜査ドラマ『アラスカ・デイリー』や、アラスカの研究所を舞台にした『トゥルー・ディテクティブ ナイト・カントリー』などに出演しています。『ここが世界の最北端』への主演で、これから活躍の場が広がりそうな期待の俳優です。
『ここが世界の最北端』のまとめ
『ここが世界の最北端』は北極圏を舞台に、イヌイットの土地と文化の魅力を惜しみなく伝えるシリーズ。
また、女性の自立やエンパワメントといったテーマが、魅力的なキャラクターたちとコメディタッチで綴られていて、大切なメッセージを重くなりすぎないトーンで受け取れる秀作です。ぜひ、Netflixでチェックしてみてください♪

